【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十「行動力と交渉力」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年10月16日

現状に安穏としていては、交渉力や競争力は磨かれない。

Jの外国籍選手はブラジル人と韓国人が中心。彼らの場合、通訳なども含めて生活面の対応もノウハウがあるためにコストは安く、トラブルは少ないが……。写真:サッカーダイジェスト

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「移籍交渉は戦争同然ですよ。少しでも自分たちが有利な時を見逃さず、すかさずサインさせないと損をします。ベベットには契約書を突き出し、表に駐めてあったトラックのボンネットでサインさせました。マウロはただも同然、移籍金は5000万ペセタ(日本円で約3500万円)でしたからね。おそらくリーガ史上、外国人選手としては最高の稼働率でしょう」
 
 リトはそう振り返っているが、その行動力と交渉力が世界を解き放ったということだろうか。
 
 翻って、Jリーグの外国籍選手はブラジル人、韓国人が中心だ。スロベニア、旧ユーゴ圏の選手などもちらほらといるが、その数は限られている。外国人助っ人の獲得ルートが制限されているのは、一目瞭然だろう。
 
 これは残念ながら、Jクラブの交渉力の低さとパイオニアとしての挑戦意欲の欠如が要因と言わざるを得ない。その結果、目利きの悪さも含め、“がらくた”をつかまされることもしばしばである。
 
 もちろん、数多く来日しているブラジル人、韓国人選手であれば、通訳なども含めて生活面の対応もノウハウがあるためにコストは安く、トラブルは少ないのだろう。彼らはいわば、“リスクの少ない商品”だ。長引く不況のなか、クラブが積極策を打てないのも分からないではない。
 
 しかし、そこで思考を止めてしまっていいのだろうか?
 
 現状に安穏としていては、交渉力や競争力は磨かれない。例えば、リトのような人材も探り当てられないだろう。リーグとしてのエネルギーが、次第に萎んでしまう危険性を孕んでいる。
 
 日本サッカー界にも、デポルのようなクラブ、もしくはリトのような人物の出現が待望される。
 
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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