【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四十「行動力と交渉力」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年10月16日

“デポル”が変貌を遂げた最大の理由は、交渉人とその経路の確立。

00-01シーズンから5年連続でCLに出場するなど、黄金期を築いたデポルティボ。その背後には、敏腕交渉人である“リト”の姿があった。(C)Getty Images

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 スペインの北西、ガリシア地方の漁港町に、なぜ欧州を席巻するようなチームが誕生したのか?
 
 拙著『おれは最後に笑う』に収めたルポで、2000年代にヨーロッパを震撼させるジャイアントキリングを繰り返したデポルティボ・ラコルーニャの謎に迫ったことがある。スーペル・デポルと呼ばれた彼らは、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、バイエルン・ミュンヘン、ユベントス、ACミランなどを次々にノックアウト。人口約24万人の小さな町は沸き立ち、その衝撃は世界へと広がった。
 
 80年代までは2部リーグが定位置だった地方の田舎クラブに、奇跡が起きた。“デポル”が変貌を遂げた理由はいくつかあるだろう。しかし、その最大の理由は交渉人とその経路を確立したことにあった。
 
 90年代に入ってから、クラブは強化に力を入れている。その時、手を貸したのが、カイシャ・ガリシア銀行のブラジル支部長だったマヌエル“リト”ミゲスという人物だった。大手銀行の幹部は人脈が豊かで、クラブの幹部や選手たちとも有力なパイプを持ち、なおかつ人を見る目、選手スカウティング能力にも優れていたのだろう(96年からはFIFAサッカー代理人となる)。
 
 このリトを通じ、デポルはブラジル人選手を手に入れることになった。しかし当時、リーガ・エスパニョーラでブラジル人がプレーするケースは珍しく、例外的だったという。
 
「ブラジル人は夜遊び好きで規律がない」
 
 そんな風評がはびこり、多くのクラブがブラジル人選手を敬遠していた。今ではどのクラブもブラジル人と契約するようになったが、当時は“リスクの高い投資物件”だったのだ。
 
 しかし、その見方は劇的に変わる。デポルが獲得したマウロ・シルバ、ベベットといった選手たちが成功を収めて端緒を開くと、ロマーリオ、ロナウド、ロベルト・カルロスなどが道を広げることになる。
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