【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の三十八「ストライカー依存」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年10月01日

一方で、ひとりのゴールゲッターへの依存はリスクを増幅させる。

過去に“噛み付き事件”を起こすなど、ネガティブなイメージも強いL・スアレスだが、犠牲の精神も強い。それはゴール後の仲間への感謝に表われている。(C)Getty Images

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 もっとも、2部クラブは資金力に難があるため競争率が高くて値段が高騰しやすいストライカーの獲得には苦労する。大抵は、ビッグクラブのセカンドチームに在籍する若いFWか、サッカーマイナー国のストライカーに投資。もしくは2部を仕事場にする職人的ストライカーを頼みの綱とする。Jリーグでは、J2歴代最多得点の大久保哲哉(横浜FC)が相当するだろうか。
 
 一方、得点力のあるストライカーを擁していても、チームの順位と比例しない場合もある。ストライカーのエゴが強すぎると、ひとりの得点のためだけにチーム全体が動かざるを得ない。そのアンバランスさは相手に急所を晒し、チームの流れをネガティブにすることがある。ストライカーの人間性や監督の求心力、あるいは選手同士の関係性になんらかの不整合があるのだろう。
 
 ひとりのゴールゲッターへの依存はリスクを増幅させる。そこは人選のセンスが不可欠になる。
 
 ウルグアイ代表FWのルイス・スアレスは、噛みつき事件を起こすなど奔放な印象があるかもしれないが、チームメイトへのリスペクトは欠かさず、犠牲の精神も強い。だからこそ、リオネル・メッシやネイマールなど我の強い選手とも共存できる。
 
 協調性の象徴は、ゴールした瞬間だろう。L・スアレスはアシストを送った仲間に対し、必ず感謝を示している。ゴールの祝福の一場面に過ぎないが、そうした行動規範は改めて評価されるべきだろう。
 
 優秀なストライカーを得ることは、まさに一騎当千に値する。1部リーグでも当てはまるが、2部リーグではなおさらに――。
 
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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