ハリルはハーフタイムに「もっとミドルシュートを」と指示。すぐさま体現したのは…。
ミドルシュートは偶然ではなく、後方からチャンスを狙っていたと吉田は振り返る。
「もちろん中盤の選手もチャンスがあったと思いますが、僕とモリゲ(森重)のところでもかなり押し込んでスペースができていたので、チャンスはあると思っていた」
さらに、ゴール時の大胆な上がりについても回想する。
「中盤が(攻撃で)行き詰っている状態の時、(CBが上がると)瞬間的に(後方は相手と)同数になりますが、それぐらいは大丈夫だと思うので、そこで良い形でボールを受けられればと思っていた。トラップが上手くいったので良かった」
前半の日本は、後方で人数が余りすぎる傾向にあった。ワールドカップ予選である以上、万全のリスクマネジメントを施したゆえだろう。だが、カンボジアとの圧倒的な力量差を考えれば、その姿は“小心”にも映った。ハリルホジッチ監督もそう感じたのだろう。
「ハーフタイムに監督から『もっとミドルシュートを』という指示が改めてあり、2点目が大事だという話もしていた。(自分が)2点目を決めて……監督は不敵な笑みを浮かべていました」(吉田)
果たして、吉田の思い切りの良い上りから、鮮やかなミドル弾が生まれたのである。指揮官の「もっとミドルシュートを」という指示をすぐさま体現したのだ。
一方、CBとしての役割はほぼ完璧と言って差し支えない。カンボジアをシュート1本に抑え込んでおり、危ない場面は皆無だった。CBでコンビを組んだ森重もこう証言する。
「こういう試合(日本が一方的に押し込んでいる展開)は、CBにとって難しいというのは分かっていた。麻也とコミュニケーションを取りながら、クリアボールを自分たちが拾えたし、危ない場面も一度もなかった。後ろはパーフェクトに仕事ができたと思います」