業を煮やした吉田が、50分に“シュートの模範”を示す。
もういい加減にゴールを決めてくれ――。50分に放った吉田の力強いミドルシュートには、そんな想いが込められていたかのようだった。
28分に本田の無回転ミドルで日本が先制したが、これは相手GKの対応ミスとも受け取れる。61分に香川が決めた3点目も、あくまでこぼれ球を押し込んだものだ。もちろん、本田と香川のゴールも一連の流れから生まれたとはいえ、ある種の形になっていたのは吉田のゴールだけだろう。
日本が一方的に攻め続け、エリア内にもあれだけ自由に出入りできる状況にあり、実際に何度も切り崩している。それでも肝心のゴールがなかなか決まらない……。攻撃陣やボランチが、打てども打てどもシュートは決まらず、業を煮やした吉田が“参考にしろ”と言わんばかりのお手本を示したのだ。
吉田は「前半に点が取れたので、そんなに嫌な雰囲気にはならなかった」と語りながらも、決定力不足について「なんでか分からないですけど、(ゴールがなかなか)入らないですね」と首を傾げた。直接言及しなかったものの、決定力不足の背景には“シュート技術・精度の欠如”があるのは明白だ。
ただし、自身の代表通算5ゴール目(通算56試合出場)については素直に喜んだ。
「監督は試合前から『ミドルシュート、ミドルシュート』と何度も言っていました。気持ち良いもんですね。ああいうゴールは、多分、高校時代以来だと思います。(ゴールパフォーマンスを監督に向けてやっていたのは)ちょっと前にFKを失敗していたので、多少、練習した甲斐があったというのをアピールしました」
日本がカンボジア戦で放ったシュートは計34本(前半12本、後半22本)。そのうち、あと数本でも吉田のミドルシュートのような精度があれば、ゴール量産につながっていただろう。吉田のゴール自体は、手放しで称賛されるものだ。しかし、CBの放ったシュートが模範となるようなチーム状態は、決して健全とは言えない。