自分なりのビジョンと適応力を示し、なおかつ結果を出す。
今季はトップ下とボランチで起用されている中村だが、この日は前節・鳥栖戦に続き、トップ下で先発。抜群のキープ力と正確なパスで攻撃を組み立て、献身的なディフェンスでもチームを助ける。その貢献度を中澤も認めている。
「良い形でボールを取った時に、俊がいるとそこで一呼吸が置ける。攻守において、すごくキーになっている」
モンバエルツ監督は、中村をトップ下に置かない試合では、豊富な運動量で最前線にも果敢に飛び出していける三門や喜田をそのポジションで起用している。つまり、どちらかと言えばテクニックと戦術眼に秀でる中村とはタイプを異にする選手をもって、縦に速いサッカーを展開しようともしている。ただ、そうしたチームコンセプトのなかで、中村も精力的なランニングをこなしつつ、自分なりのビジョンと適応力を示し、なおかつ結果を出すことに成功している。
「前の3人(伊藤、アデミウソン、齋藤)がバッと出た時に、自分は止まる。でも、そこからのパスで彼らの推進力を促せれば、一緒になって走るより、もっと早い速攻になるかもしれない。走るよりボールを早く転がせ、というイメージ」
率先して前に出て行くより、「ためて、ためて」と味方を前線に上げさせる時間を捻出し、持ち前の正確なパスを駆使して「もっと高い位置で1対1や3対3の状況を作る」ようにする。中村本人も「3点目はけっこうそれに近い形だった」と振り返るように、カウンターから中村の縦パスでアデミウソンを走らせ、そこからの折り返しを齋藤が決めたシーンは、まさに狙いどおりだったはずだ。
開幕前の怪我で出遅れ、第1ステージはほとんど稼働できなかった。第2ステージに入ってからはスタメン落ちを経験するなど苦しい時期を過ごしてきたが、ここに来て本来の姿を取り戻しつつある。
このままでは終われない――そんなプライドが滲み出る圧巻のパフォーマンスで、チームを今季初の4連勝へと導いてみせた。
中村は68分に途中交代しているが、その後の横浜は勢いがトーンダウン。齋藤は「俊さんが交代したあたりから、守備に入る時間が多くなった。5点、6点取れるようなチャンスを作らないといけないし、その起点に僕ももっとならないと」と反省の弁を述べる。
中村に代わって投入されたのは喜田だが、決して喜田に力がないわけではない。そもそも、まだ21歳の若手と、かつて日本代表の10番を背負い、欧州でも輝かしい実績を誇る大ベテランを比較するほうがナンセンスだ。この“国民的フットボーラー”の影響力を考えれば、いるといないではチームの出来が変わってくるのは当然だろう。
年間順位で首位に立つ浦和を相手に盤石の戦いぶりで完封勝利を収めても、中澤は手厳しい。試合全体を通じて「後半はこっちもあまり良くなかった。ゲーム運びとしてはまだまだ」と表情を引き締める。そしてミックスゾーンからの去り際にふと呟く。
「やっぱり、俊がいないとダメだね」
この一言がすべてだろう。
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
「良い形でボールを取った時に、俊がいるとそこで一呼吸が置ける。攻守において、すごくキーになっている」
モンバエルツ監督は、中村をトップ下に置かない試合では、豊富な運動量で最前線にも果敢に飛び出していける三門や喜田をそのポジションで起用している。つまり、どちらかと言えばテクニックと戦術眼に秀でる中村とはタイプを異にする選手をもって、縦に速いサッカーを展開しようともしている。ただ、そうしたチームコンセプトのなかで、中村も精力的なランニングをこなしつつ、自分なりのビジョンと適応力を示し、なおかつ結果を出すことに成功している。
「前の3人(伊藤、アデミウソン、齋藤)がバッと出た時に、自分は止まる。でも、そこからのパスで彼らの推進力を促せれば、一緒になって走るより、もっと早い速攻になるかもしれない。走るよりボールを早く転がせ、というイメージ」
率先して前に出て行くより、「ためて、ためて」と味方を前線に上げさせる時間を捻出し、持ち前の正確なパスを駆使して「もっと高い位置で1対1や3対3の状況を作る」ようにする。中村本人も「3点目はけっこうそれに近い形だった」と振り返るように、カウンターから中村の縦パスでアデミウソンを走らせ、そこからの折り返しを齋藤が決めたシーンは、まさに狙いどおりだったはずだ。
開幕前の怪我で出遅れ、第1ステージはほとんど稼働できなかった。第2ステージに入ってからはスタメン落ちを経験するなど苦しい時期を過ごしてきたが、ここに来て本来の姿を取り戻しつつある。
このままでは終われない――そんなプライドが滲み出る圧巻のパフォーマンスで、チームを今季初の4連勝へと導いてみせた。
中村は68分に途中交代しているが、その後の横浜は勢いがトーンダウン。齋藤は「俊さんが交代したあたりから、守備に入る時間が多くなった。5点、6点取れるようなチャンスを作らないといけないし、その起点に僕ももっとならないと」と反省の弁を述べる。
中村に代わって投入されたのは喜田だが、決して喜田に力がないわけではない。そもそも、まだ21歳の若手と、かつて日本代表の10番を背負い、欧州でも輝かしい実績を誇る大ベテランを比較するほうがナンセンスだ。この“国民的フットボーラー”の影響力を考えれば、いるといないではチームの出来が変わってくるのは当然だろう。
年間順位で首位に立つ浦和を相手に盤石の戦いぶりで完封勝利を収めても、中澤は手厳しい。試合全体を通じて「後半はこっちもあまり良くなかった。ゲーム運びとしてはまだまだ」と表情を引き締める。そしてミックスゾーンからの去り際にふと呟く。
「やっぱり、俊がいないとダメだね」
この一言がすべてだろう。
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)