得点の確率増加は、失点の確率増加と同義。
しかし規律からはみ出た自由は、多量の危険を伴う。例えば守備のバランスを捨てた、7、8人もの選手が敵のバイタルエリアに侵入する攻撃は、華やかで成功を遂げると勢いを得られるものの、失敗すれば逆襲を受け、破滅的損害を受ける恐れがある。
それは言い換えれば、くじを引いてあたりかはずれか、という賭博性を隠し持っている。
「手数をかけたら得点の確率が増える」
そう語られることがしばしばあるが、度が過ぎるとトップレベルでは敵に有利を与えることになるだろう。得点の確率増加は、失点の確率増加と同義なのだ。
欧州のトップチームは(一部を除いて)カウンターの2、3人によってフィニッシュするのが定石となっている。7人も攻撃に関わらないと点が取れないなら、ストライカーの値打ちに合わない(彼らは多くがチームのなかでも高給を受け取り、得点を取るのが仕事だ)。たとえ遅攻でも、戦況が大きく不利でない限り、堅牢さを失った攻撃はハイリスクでギャンブル性を孕む。
欧州王者になったバルサは、ポゼッションプレーから攻撃に手数をかけるのが伝統だった。しかし2014-15シーズンに就任したルイス・エンリケ監督は、効率的な戦い方に活路を見出した。それは伝統に反目し、反発も少なからずあったが、指揮官は動じなかった。
守備のタスクをそれぞれの選手がこなし、無理に攻めに出ず、守備の安定の上に攻撃を築いた。攻撃を担ったのは、「MSN」と頭文字で呼称されるリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3トップだった。
堅牢さありきか、自由独創ありきか。
どちらを監督が採用するか、それは優劣で語るべきテーマではないだろう。しかし、戦い方の教科書は前者。後者は高度な応用編である。
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
それは言い換えれば、くじを引いてあたりかはずれか、という賭博性を隠し持っている。
「手数をかけたら得点の確率が増える」
そう語られることがしばしばあるが、度が過ぎるとトップレベルでは敵に有利を与えることになるだろう。得点の確率増加は、失点の確率増加と同義なのだ。
欧州のトップチームは(一部を除いて)カウンターの2、3人によってフィニッシュするのが定石となっている。7人も攻撃に関わらないと点が取れないなら、ストライカーの値打ちに合わない(彼らは多くがチームのなかでも高給を受け取り、得点を取るのが仕事だ)。たとえ遅攻でも、戦況が大きく不利でない限り、堅牢さを失った攻撃はハイリスクでギャンブル性を孕む。
欧州王者になったバルサは、ポゼッションプレーから攻撃に手数をかけるのが伝統だった。しかし2014-15シーズンに就任したルイス・エンリケ監督は、効率的な戦い方に活路を見出した。それは伝統に反目し、反発も少なからずあったが、指揮官は動じなかった。
守備のタスクをそれぞれの選手がこなし、無理に攻めに出ず、守備の安定の上に攻撃を築いた。攻撃を担ったのは、「MSN」と頭文字で呼称されるリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3トップだった。
堅牢さありきか、自由独創ありきか。
どちらを監督が採用するか、それは優劣で語るべきテーマではないだろう。しかし、戦い方の教科書は前者。後者は高度な応用編である。
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。