すでに選手の心を掴んだコーチ陣。そして監督もまた勉強中。

インザーギの全てが悪かったわけではない(実際に彼の良き兄貴的な存在感が昨季序盤は良い方向に作用した)が、今のミランには厳しさが一番必要なのかもしれない。 (C) Alberto LINGRIA
もうひとつ、昨シーズンとまるで違うのが、ミラネッロを支配する静けさだ。練習は黙々と、静寂のなかで行なわれる。ミハイロビッチが話す時は、ハエさえも飛ぶことを遠慮するぐらいだ。
もちろん、昨シーズンのミランが、小学生の遠足のようにうるさかったというわけではない。しかし、今シーズンの選手と監督の関係が、インザーギ時代と全く異なるのは確かだ。それはふたりの監督の資質というより、背景の違いによる。
インザーギは、ほんの少し前までミランの選手であり、昨季の選手のなかには元チームメイトもいた。だから監督といっても、どこかに仲間意識があった。しかし、ミハイロビッチの下では、監督、スタッフと選手の立場の違いは、はっきりとしている。
ところでスタッフといえば、ミハイロビッチのコーチ陣は(GKコーチ以外はすべてサンプドリア時代と同じ顔触れで固めている)ここまでの仕事で、ぐいぐいと選手の心を掴んでいる。誰もが彼らを信頼し、選手はコーチにも、まるで監督のように接する。実際、コーチが指導している練習に、ミハイロビッチが口を出すことはほとんどない。
ミハイロビッチは自分のスタッフに全幅の信頼を寄せており、選手たちもそれを敏感に感じ取っているのだ。
もうひとりの鬼軍曹は、フィジカルトレーナーだ。彼は選手とともに走り、汗をかき、選手の疲労度が警戒レベルにまで達してきたと気づけば鼓舞し、意識的にスピードを落としたり歩いたりすれば怒る(それも物凄く!!)。ミラネッロではすでに何度も、彼の怒声が響いている。
ミハイロビッチは、非常に熱心で準備周到だ。それをよく物語っているエピソードがある。彼はトレーニングの時、常に2つのピッチを用意している。1つ目の練習メニューが終われば、もう片方のピッチではすでに次の練習の用意ができている。少しでも練習時間を無駄にしないための工夫だ。
ミハイロビッチの練習に、“偶然”の入り込む余地はない。その週の練習の内容は、すでに細部まで決まっており、それが変更になることは稀である。
もっとも、選手への要求だけではない。ミハイロビッチ自身、チームやミラネッロに対する勉強に励んでいる最中だ。分からないことがあれば、何でも聞いてくる(例えば、もし練習のアシスタントに知らない顔がいたら、すぐに誰かを聞いてくる)。
シーズン最初の練習試合におけるミハイロビッチは、90分中80分はベンチに座ったままで、指示を出したのは2度だけ。あとの時間では、自チームの選手を研究するのに余念がなかった。
ピッチの横で怒鳴って指示を出すのは、もう少し先のこと。今はただ、研究と練習あるのみだ。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
もちろん、昨シーズンのミランが、小学生の遠足のようにうるさかったというわけではない。しかし、今シーズンの選手と監督の関係が、インザーギ時代と全く異なるのは確かだ。それはふたりの監督の資質というより、背景の違いによる。
インザーギは、ほんの少し前までミランの選手であり、昨季の選手のなかには元チームメイトもいた。だから監督といっても、どこかに仲間意識があった。しかし、ミハイロビッチの下では、監督、スタッフと選手の立場の違いは、はっきりとしている。
ところでスタッフといえば、ミハイロビッチのコーチ陣は(GKコーチ以外はすべてサンプドリア時代と同じ顔触れで固めている)ここまでの仕事で、ぐいぐいと選手の心を掴んでいる。誰もが彼らを信頼し、選手はコーチにも、まるで監督のように接する。実際、コーチが指導している練習に、ミハイロビッチが口を出すことはほとんどない。
ミハイロビッチは自分のスタッフに全幅の信頼を寄せており、選手たちもそれを敏感に感じ取っているのだ。
もうひとりの鬼軍曹は、フィジカルトレーナーだ。彼は選手とともに走り、汗をかき、選手の疲労度が警戒レベルにまで達してきたと気づけば鼓舞し、意識的にスピードを落としたり歩いたりすれば怒る(それも物凄く!!)。ミラネッロではすでに何度も、彼の怒声が響いている。
ミハイロビッチは、非常に熱心で準備周到だ。それをよく物語っているエピソードがある。彼はトレーニングの時、常に2つのピッチを用意している。1つ目の練習メニューが終われば、もう片方のピッチではすでに次の練習の用意ができている。少しでも練習時間を無駄にしないための工夫だ。
ミハイロビッチの練習に、“偶然”の入り込む余地はない。その週の練習の内容は、すでに細部まで決まっており、それが変更になることは稀である。
もっとも、選手への要求だけではない。ミハイロビッチ自身、チームやミラネッロに対する勉強に励んでいる最中だ。分からないことがあれば、何でも聞いてくる(例えば、もし練習のアシスタントに知らない顔がいたら、すぐに誰かを聞いてくる)。
シーズン最初の練習試合におけるミハイロビッチは、90分中80分はベンチに座ったままで、指示を出したのは2度だけ。あとの時間では、自チームの選手を研究するのに余念がなかった。
ピッチの横で怒鳴って指示を出すのは、もう少し先のこと。今はただ、研究と練習あるのみだ。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。