オシム監督も目を細めたパフォーマンス
パクに「世界」のレベルを突きつけられた。とはいえ、阿部個人としては手応えもあった。緊急先発ながら、及第点のプレーだった。だからこそこう言った。
「センターバックもボランチも過去にやったことがあるし、いろいろなポジションを与えられるなかでも、やってやろうという気持ちは、いつでも持っている」
恩師イビチャ・オシムが授けてくれた「自信」が芽生えていた。のちに阿部は、オシムが「ポリバレント」の価値を世に示してくれたことが自信につながったと語っていた。
韓国戦がチームとして最悪な負け方だっただけに、イングランド戦を起死回生のきっかけにしたいという気持ちは代表選手の誰もが持っていた。試合のポイントは、変幻自在なポジショニングから決定的な仕事をするルーニーをいかに抑えるか。
ここで阿部はルーニー潰しのキーマンとして4-1-4-1のアンカーの役割を与えられ、期待に応えた。ルーニーに入るボールを封じるだけでなく、奪ってから攻撃へと素早く転じるプレーは、フォルカー・フィンケ監督の教えにより、普段から浦和でやっているコンセプトと同じだった。阿部は「役割がハッキリしていたので、やりやすかった」と語っていた。
岡田監督はイングランド戦後に「ルーニーが下がってきた時にストッパーが行ったら勇樹が下がる、勇樹が行ったらストッパーがステイするということができた」と、最終ラインとの連係面を評価していた。南アフリカ・ワールドカップを4-1-4-1のシステムで戦うという腹が固まった。
試合を見に来ていたオシムは「阿部があんなに良いプレーをしたのはちょっと記憶にない。彼には“自信を持て”と言い続けてきたが、今日のプレーで本当に自信を持てたかもしれない」と目を細めていた。
そして、南アフリカ・ワールドカップで日本は史上初のベスト16に駒を進めた。阿部は間違いなく、その立役者のひとりだった。
南アフリカ・ワールドカップ後に移籍したイングランドのレスターでのプレーを挟み、12年1月に浦和に復帰してからは、誰よりも先に大原に来てトレーナーに身体をチェックしてもらい、試合前後には交代浴を欠かさないなど、入念なケアで心技体を維持する姿がある。その姿勢は柴戸海や伊藤敦樹ら、次代の浦和を担う選手たちの目に強く焼き付けられている。Jリーグが誇る、浦和が誇る名選手である。
取材・文●矢内由美子(スポーツライター)
【阿部勇樹引退会見PHOTO】涙あり!笑顔あり!阿部勇樹の現役引退会見を特集!!
「センターバックもボランチも過去にやったことがあるし、いろいろなポジションを与えられるなかでも、やってやろうという気持ちは、いつでも持っている」
恩師イビチャ・オシムが授けてくれた「自信」が芽生えていた。のちに阿部は、オシムが「ポリバレント」の価値を世に示してくれたことが自信につながったと語っていた。
韓国戦がチームとして最悪な負け方だっただけに、イングランド戦を起死回生のきっかけにしたいという気持ちは代表選手の誰もが持っていた。試合のポイントは、変幻自在なポジショニングから決定的な仕事をするルーニーをいかに抑えるか。
ここで阿部はルーニー潰しのキーマンとして4-1-4-1のアンカーの役割を与えられ、期待に応えた。ルーニーに入るボールを封じるだけでなく、奪ってから攻撃へと素早く転じるプレーは、フォルカー・フィンケ監督の教えにより、普段から浦和でやっているコンセプトと同じだった。阿部は「役割がハッキリしていたので、やりやすかった」と語っていた。
岡田監督はイングランド戦後に「ルーニーが下がってきた時にストッパーが行ったら勇樹が下がる、勇樹が行ったらストッパーがステイするということができた」と、最終ラインとの連係面を評価していた。南アフリカ・ワールドカップを4-1-4-1のシステムで戦うという腹が固まった。
試合を見に来ていたオシムは「阿部があんなに良いプレーをしたのはちょっと記憶にない。彼には“自信を持て”と言い続けてきたが、今日のプレーで本当に自信を持てたかもしれない」と目を細めていた。
そして、南アフリカ・ワールドカップで日本は史上初のベスト16に駒を進めた。阿部は間違いなく、その立役者のひとりだった。
南アフリカ・ワールドカップ後に移籍したイングランドのレスターでのプレーを挟み、12年1月に浦和に復帰してからは、誰よりも先に大原に来てトレーナーに身体をチェックしてもらい、試合前後には交代浴を欠かさないなど、入念なケアで心技体を維持する姿がある。その姿勢は柴戸海や伊藤敦樹ら、次代の浦和を担う選手たちの目に強く焼き付けられている。Jリーグが誇る、浦和が誇る名選手である。
取材・文●矢内由美子(スポーツライター)
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11月25日発売号のサッカーダイジェストでは、引退惜別企画として阿部勇樹選手と玉田圭司選手をクローズアップ。彼らのこれまでのキャリアをプレーバックしつつ、偉大な実績を改めて目に焼き付けてください。(C)SOCCER DIGEST