タイ料理を日本風にアレンジして気付いたこと。
つい最近、友人と吉岡アシスタントコーチの3人で、タイの豚しゃぶを食べに行った。僕は2回目で、1回目は友人とふたりで初めて豚しゃぶを口にした。もちろんタイ風であり、食べ始めは「うん? なにか(日本の味と)違うぞ?」と感じたものの最終的には美味しく食べることができた。
しかし、その時にやっぱり「これは『ポン酢』だよ!」という話になった。店で食すタイ豚しゃぶは、タイの調味料を自分なりにアレンジしてタレを作る。だから、やはりどこかスパイシーな感覚となる。そこで2回目は日本の100円ショップで購入してきたポン酢持参でタイ豚しゃぶ屋に乗り込んだのである。
すると、なにが起こったか豚肉を頼む量が増え、食が進む進む……。これが日本の食文化の凄さなのだろう。美味しく食べられれば食は進む(もちろんタイ風も美味しいが)。日本の塩とニンニクも持ち込み、うどんにおじやにと、タイ風しゃぶしゃぶを日本風に勝手にアレンジし、3人で日本の食を絶賛していた。
タイ料理の利点は安上がりなうえに、一食で当分は食欲が抑えられるところ。(言い方を変えれば食欲が出ない)。理由はその独特な刺激の強い辛さ、スパイシーさで、口の中の味覚が、食事の「終わり」を告げるのである。逆に、日本食は食欲を抑えることなく、「次はこの味、その次はこれ」と、次々にいろんな味を欲し、味わえる仕組みになっている。
考えてみればカーソーイを食べれば、かなりの時間、お腹は減らない。もちろん、その土地の気候や文化の成り立ちも関係するので、どちらが良い悪いと決めつけはしないが、日本人のようにこの料理にはこう、この状況ではこう、この雰囲気の店ではこう、また一緒にいる人によってはこう、と「変える」あるいは「合わせる」という文化はあまりないのかもしれない。
さらに言えば、サッカーにも似たような違いを感じる。ディテールやプロセスより、結果をより重視する傾向がある――、というのはここ数か月で実際に感じてきたことだ。
冒頭の女子学生のように、タイではお母さんの手作りのご飯を食べたことがなくても、お腹が空いて死にそうになることはない。タイ人の味覚に合った食事と庶民に愛される屋台というスタイルによって、現状はそれでも幸せな生活を送れているし、タイではそれ以上の幸せ(例えば、お母さんや自分が作る手料理の味)を知らなくてもいい社会ができ上がっている。
タイでタイ料理の魅力を知り、日本人の作る食の奥深さを知る。素晴らしいことだと日々感じている。サッカー監督という仕事をしている限り、いつまでも続くというわけではない、こうした貴重な時間を大切にしていきたい。
ファーストステージもいよいよ残り3試合となった。チームにとっても、僕にとっても大事な3試合である。これからのホーム2戦、アウエー1戦を全力で戦うのみだ。
2015年7月6日
三浦泰年
しかし、その時にやっぱり「これは『ポン酢』だよ!」という話になった。店で食すタイ豚しゃぶは、タイの調味料を自分なりにアレンジしてタレを作る。だから、やはりどこかスパイシーな感覚となる。そこで2回目は日本の100円ショップで購入してきたポン酢持参でタイ豚しゃぶ屋に乗り込んだのである。
すると、なにが起こったか豚肉を頼む量が増え、食が進む進む……。これが日本の食文化の凄さなのだろう。美味しく食べられれば食は進む(もちろんタイ風も美味しいが)。日本の塩とニンニクも持ち込み、うどんにおじやにと、タイ風しゃぶしゃぶを日本風に勝手にアレンジし、3人で日本の食を絶賛していた。
タイ料理の利点は安上がりなうえに、一食で当分は食欲が抑えられるところ。(言い方を変えれば食欲が出ない)。理由はその独特な刺激の強い辛さ、スパイシーさで、口の中の味覚が、食事の「終わり」を告げるのである。逆に、日本食は食欲を抑えることなく、「次はこの味、その次はこれ」と、次々にいろんな味を欲し、味わえる仕組みになっている。
考えてみればカーソーイを食べれば、かなりの時間、お腹は減らない。もちろん、その土地の気候や文化の成り立ちも関係するので、どちらが良い悪いと決めつけはしないが、日本人のようにこの料理にはこう、この状況ではこう、この雰囲気の店ではこう、また一緒にいる人によってはこう、と「変える」あるいは「合わせる」という文化はあまりないのかもしれない。
さらに言えば、サッカーにも似たような違いを感じる。ディテールやプロセスより、結果をより重視する傾向がある――、というのはここ数か月で実際に感じてきたことだ。
冒頭の女子学生のように、タイではお母さんの手作りのご飯を食べたことがなくても、お腹が空いて死にそうになることはない。タイ人の味覚に合った食事と庶民に愛される屋台というスタイルによって、現状はそれでも幸せな生活を送れているし、タイではそれ以上の幸せ(例えば、お母さんや自分が作る手料理の味)を知らなくてもいい社会ができ上がっている。
タイでタイ料理の魅力を知り、日本人の作る食の奥深さを知る。素晴らしいことだと日々感じている。サッカー監督という仕事をしている限り、いつまでも続くというわけではない、こうした貴重な時間を大切にしていきたい。
ファーストステージもいよいよ残り3試合となった。チームにとっても、僕にとっても大事な3試合である。これからのホーム2戦、アウエー1戦を全力で戦うのみだ。
2015年7月6日
三浦泰年