確かに瞬間的なスピードはあるが、浅野拓磨の50メートル5.9秒という圧巻の速さほどではない。高さや強さも、豊田陽平(鳥栖)とは比較にならない。大久保嘉人(川崎)の強引さも、中村俊輔(横浜)のFKも、彼にはない。中山雅史のように黄金時代の磐田で戦ってきたわけでもなく、仙台と広島で2度の降格も経験している。
それなのに、誰よりも点が取れている。この現象を「決定力」などと曖昧模糊とした言葉で片付けてしまっては、佐藤の後に続くストライカーは、出現しない。
例えば、その研究心。昨季終了後、佐藤はサイド攻撃から点を取れていない現実を注視。Jリーグの全ゴール映像をスタッフに編集してもらい、クロスからのゴールパターンを徹底分析・蓄積したうえで、練習を積み重ねた。
ただ、それは特別なことではなく、彼にとっての日常。学生時代に培ったパソコンによるデータ解析力を活かして、自身のプレー分析を続ける。J1やヨーロッパのサッカーだけでなく、J2の試合も見て映像資料として蓄積し、iPadやパソコンを使って常に研究を重ねたその成果が、202得点につながっている。
「考えに考えること」――。
得点を取るためにやっていることを、佐藤はこういう言葉で表現した。例えば、201点目となった16節・山形戦の2点目。ドウグラスのヘッドがバーに当たった時から混戦が続き、ボールはパチンコ玉のように何度も変化した。通常、その渦中に考えを巡らせる余裕などないものだが、ひとり冷静を保っていたのが佐藤だ。水本裕貴のパスをスッと浮かせ、腰の回転を使って強烈に叩き込んだ。このゴールをエースは「遊びの中でやっていた」と言う。
■J1通算最多得点トップ10 | ||||
順位 | 選手名 | 現所属・最終所属 | J1得点(J2得点) | 試合数 |
1 | 中山雅史 | 札幌 | 157(0) | 355 |
2 | 佐藤寿人 | 広島 | 152(50) | 358 |
3 | マルキーニョス | 神戸 | 150(0) | 328 |
4 | 大久保嘉人 | 川崎 | 143(18) | 321 |
5 | 三浦知良 | 横浜FC | 139(18) | 321 |
6 | 前田遼一 | FC東京 | 138(17) | 338 |
7 | ウェズレイ | 大分 | 124(0) | 217 |
8 | ジュニーニョ | 鹿島 | 116(65) | 264 |
9 | エジミウソン | FC東京 | 111(0) | 236 |
10 | 柳沢 敦 | 仙台 | 108(0) | 371 |