新監督の下では10番タイプの選手が中盤に並ぶことはない。
ラファエル・ベニテスのレアル・マドリー監督就任が決まった数日後、ジネディーヌ・ジダンはこう語った。
「ベニテスの就任で、チームには多くの変化がもたらされるだろう」
バルセロナの三冠達成を、指をくわえて眺めざるを得なかったマドリー。来シーズンでの王座奪還を期するチームにもたらされる、ベニテス流の変化とは何なのか。
1)システムの変更
まず、フォーメーションの変更が挙げられる。カルロ・アンチェロッティ時代のベースだった4-3-3から、ベニテスがキャリアを通して採用している4-2-3-1への変更だ。
2013-14シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)準決勝バイエルン戦のような例外こそあったものの、アンチェロッティはポゼッションを重視する姿勢を貫いた。対してベニテスは、それほどポゼッションにはこだわらず、攻守の切り替えの速さ、トランジッションを重視する。
アンチェロッティは中盤に、トニ・クロース、ハメス・ロドリゲス、イスコ、ルカ・モドリッチという本来は10番タイプの選手を並べることがあったが、ベニテスの下でそれは考えにくい。少なくともひとりは、確実に守ることのできる選手を置くはずだ。
その意味では、レンタル先のポルトから復帰する予定のカゼミーロは大きな役割を担うだろう。これにより、今シーズンはディフェンスラインの前でアンカーとして最低限の活躍は見せたものの、攻撃的能力は制限されていたクロースも来シーズンは、崩しの局面でより輝くことになるだろう。
2)ローテーション
ローテーション制度の登用も間違いない。アンチェロッティは基本的に核となる11人を変えなかった。彼のなかでベストの布陣は決まっていたのである。
イケル・カシージャス、ダニエル・カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ、クロース、モドリッチ、ハメス、ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、そしてクリスチアーノ・ロナウドである。
負傷による緊急事態では、ラファエル・ヴァランヌやイスコが出場したが、全員が万全のコンディションであれば、アンチェロッティは迷わずこの11人をピッチに送り出した。
しかし、ベニテスは違う。来シーズンは、リーガ・エスパニョーラ、CL、国王杯という3つのコンペティションに絞られるマドリーだが、もしCLや国王杯で上位進出した場合、50~55試合程度はこなさなければならない。そのなかでは、重要な選手でも休息すべき時はある、と考えるのがベニテスだ。
例えば、ロナウドやベイルのどちらかをベンチに置き、ヘセ・ロドリゲスやイスコ、あるいは新加入する選手を組み入れる試合も出てくるだろう。
ロナウドとベンゼマはここ数年、シーズン終盤に調子を落とす傾向にある。ベニテスは科学的な理論とローテーションという独自の信念で、年間を通して選手の出場時間を制限する見込みだ。
3)ロナウドの「9番」起用
最後に、ひとつの可能性として考えられるのが、ロナウドの「9番」としての起用だ。
昨シーズンのロナウドは、全得点の3割以上をペナルティーエリア内からのシュートで決めている。つまり、よりCF的な得点が増えているのである。以前のような、長い距離をドリブルしてシュート、あるいはミドルという形は減りつつある。
これも自然な変化だろう。彼は2月で30歳になった。サイドでドリブルを中心に動き続けるスタイルには、もしかしたら終わりが近づいているのかもしれない。
ロナウドを4-2-3-1の頂点に置き、2列目にハメス、モドリッチ、ベイル、その下にカゼミーロとクロース――。
かつて、マドリーのエースだったブラジル人の“フェノメノ”ロナウドも、ドリブルとスピードで他を圧倒した若き頃のスタイルに変化を加え、晩年はエリア内での仕事に特化し、新たな才能を開花させた。クリスチアーノも、同じ道を歩むのか。
“9番”ロナウドは、ベニテスの新生マドリーの象徴になる可能性を秘めている。
【記者】
Pablo POLO|MARCA
パブロ・ポロ/マルカ
スペイン最大のスポーツ紙『マルカ』でレアル・マドリー番を務める敏腕記者。フランス語を操り、フランスやアフリカ系の選手とも親密な関係を築いている。アトレティコ番の経験もあり、首都の2大クラブに明るい。
【翻訳】
豊福晋
「ベニテスの就任で、チームには多くの変化がもたらされるだろう」
バルセロナの三冠達成を、指をくわえて眺めざるを得なかったマドリー。来シーズンでの王座奪還を期するチームにもたらされる、ベニテス流の変化とは何なのか。
1)システムの変更
まず、フォーメーションの変更が挙げられる。カルロ・アンチェロッティ時代のベースだった4-3-3から、ベニテスがキャリアを通して採用している4-2-3-1への変更だ。
2013-14シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)準決勝バイエルン戦のような例外こそあったものの、アンチェロッティはポゼッションを重視する姿勢を貫いた。対してベニテスは、それほどポゼッションにはこだわらず、攻守の切り替えの速さ、トランジッションを重視する。
アンチェロッティは中盤に、トニ・クロース、ハメス・ロドリゲス、イスコ、ルカ・モドリッチという本来は10番タイプの選手を並べることがあったが、ベニテスの下でそれは考えにくい。少なくともひとりは、確実に守ることのできる選手を置くはずだ。
その意味では、レンタル先のポルトから復帰する予定のカゼミーロは大きな役割を担うだろう。これにより、今シーズンはディフェンスラインの前でアンカーとして最低限の活躍は見せたものの、攻撃的能力は制限されていたクロースも来シーズンは、崩しの局面でより輝くことになるだろう。
2)ローテーション
ローテーション制度の登用も間違いない。アンチェロッティは基本的に核となる11人を変えなかった。彼のなかでベストの布陣は決まっていたのである。
イケル・カシージャス、ダニエル・カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ、クロース、モドリッチ、ハメス、ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、そしてクリスチアーノ・ロナウドである。
負傷による緊急事態では、ラファエル・ヴァランヌやイスコが出場したが、全員が万全のコンディションであれば、アンチェロッティは迷わずこの11人をピッチに送り出した。
しかし、ベニテスは違う。来シーズンは、リーガ・エスパニョーラ、CL、国王杯という3つのコンペティションに絞られるマドリーだが、もしCLや国王杯で上位進出した場合、50~55試合程度はこなさなければならない。そのなかでは、重要な選手でも休息すべき時はある、と考えるのがベニテスだ。
例えば、ロナウドやベイルのどちらかをベンチに置き、ヘセ・ロドリゲスやイスコ、あるいは新加入する選手を組み入れる試合も出てくるだろう。
ロナウドとベンゼマはここ数年、シーズン終盤に調子を落とす傾向にある。ベニテスは科学的な理論とローテーションという独自の信念で、年間を通して選手の出場時間を制限する見込みだ。
3)ロナウドの「9番」起用
最後に、ひとつの可能性として考えられるのが、ロナウドの「9番」としての起用だ。
昨シーズンのロナウドは、全得点の3割以上をペナルティーエリア内からのシュートで決めている。つまり、よりCF的な得点が増えているのである。以前のような、長い距離をドリブルしてシュート、あるいはミドルという形は減りつつある。
これも自然な変化だろう。彼は2月で30歳になった。サイドでドリブルを中心に動き続けるスタイルには、もしかしたら終わりが近づいているのかもしれない。
ロナウドを4-2-3-1の頂点に置き、2列目にハメス、モドリッチ、ベイル、その下にカゼミーロとクロース――。
かつて、マドリーのエースだったブラジル人の“フェノメノ”ロナウドも、ドリブルとスピードで他を圧倒した若き頃のスタイルに変化を加え、晩年はエリア内での仕事に特化し、新たな才能を開花させた。クリスチアーノも、同じ道を歩むのか。
“9番”ロナウドは、ベニテスの新生マドリーの象徴になる可能性を秘めている。
【記者】
Pablo POLO|MARCA
パブロ・ポロ/マルカ
スペイン最大のスポーツ紙『マルカ』でレアル・マドリー番を務める敏腕記者。フランス語を操り、フランスやアフリカ系の選手とも親密な関係を築いている。アトレティコ番の経験もあり、首都の2大クラブに明るい。
【翻訳】
豊福晋