クラブやアンチェロッティがチチャリートを絶賛する理由は…。
シーズン終盤戦のレアル・マドリーの主役は、言うまでもなくハビエル・エルナンデス、通称「チチャリート」だ。
反カルロ・アンチェロッティ派の人間は、チチャリートの復活を批判の材料にすらしている。「なぜ、もっと早く起用しなかったのか」というのが、彼らの意見だ。
たしかに、チチャリートにはもう少し時間を与えるべきだったかもしれない。しかし、もしシーズンを通して定期的にプレーしていたら、このようなタイトルレースが懸かった終盤戦での爆発はなかった可能性もある。
いずれにせよ、このタイミングでのチチャリートの登場は、チームにとって非常に重要だった。シーズンを通して、ほとんど誰からも注目されていなかった彼だが、今ではファンがマンチェスター・ユナイテッドからの買い取りを求めるほどの存在になっている。
クラブ間の合意によると、今週木曜日には、2000万ユーロでの買い取りの有無を決めなければならないことになっている。しかしマドリーは、それをシーズン終了まで延ばす見込みだ。現在のチチャリートの好調が一時のものではないと確認するための時間が必要なのである。
彼とユナイテッドの契約は2016年まで。移籍金ゼロでの放出を避けたいユナイテッドとしては、マドリーと話し合う準備はできている。
チチャリートの登場は今、マドリーに新鮮な空気を持ち込んでいる。
クリスティアーノ・ロナウドとカリム・ベンゼマは、シーズンを通してほとんどの試合でプレーしてきたこともあり、コンディション的には100パーセントの状態にない。後者は負傷欠場中だ。一方、チチャリートは心身両面で最高潮にあり、積極的なスペースへのランニング、相手CBへの激しいプレッシングと、攻守両面でチームに貢献している。
しかし、である。ベンゼマが負傷から戻ってきたらどうなるだろう?
先発でピッチに立つのは、やはりこのフランス人ストライカーになるはずだ。チチャリートは、得点感覚やエリア内での動きでこそベンゼマを上回っているが、それ以外の部分、ボールキープやラストパス、つまりクリスティアーノやガレス・ベイルを活かすプレーにおいてはベンゼマが大きく上をいっている。
昨季で証明されたように、マドリーがチャンピオンズ・リーグで優勝するためには、チチャリートではなく、クリスティアーノとベイルが得点を取ることが大事なのである。その意味で、ベンゼマにはこれまでの実績もある。簡単にこれまでの序列がひっくり返ることはないのだ。
今、クラブやアンチェロッティがチチャリートを絶賛しているのは、ベンゼマを奮い立たせるためでもある。どこか穏やかなベンゼマは、競争がなければリラックスしてしまうところがある。しかし、チチャリートが活躍している今、ポジションを失わないためにも、彼のモチベーションはさらに高まっていくだろう。
つまり、私はこう見ている。今後のタイトル争いにおいて、本当の意味で鍵を握っているのは、メディアが大騒ぎして持ち上げているチチャリートではなく、彼のポジションに戻ってくるであろう、ベンゼマなのである。
文:パブロ・ポロ
翻訳:豊福晋
Pablo POLO|MARCA
パブロ・ポロ/マルカ
スペイン最大のスポーツ紙『マルカ』でレアル・マドリー番を務める敏腕記者。フランス語を操り、フランスやアフリカ系の選手とも親密な関係を築いている。アトレティコ番の経験もあり、首都の2大クラブに明るい。
反カルロ・アンチェロッティ派の人間は、チチャリートの復活を批判の材料にすらしている。「なぜ、もっと早く起用しなかったのか」というのが、彼らの意見だ。
たしかに、チチャリートにはもう少し時間を与えるべきだったかもしれない。しかし、もしシーズンを通して定期的にプレーしていたら、このようなタイトルレースが懸かった終盤戦での爆発はなかった可能性もある。
いずれにせよ、このタイミングでのチチャリートの登場は、チームにとって非常に重要だった。シーズンを通して、ほとんど誰からも注目されていなかった彼だが、今ではファンがマンチェスター・ユナイテッドからの買い取りを求めるほどの存在になっている。
クラブ間の合意によると、今週木曜日には、2000万ユーロでの買い取りの有無を決めなければならないことになっている。しかしマドリーは、それをシーズン終了まで延ばす見込みだ。現在のチチャリートの好調が一時のものではないと確認するための時間が必要なのである。
彼とユナイテッドの契約は2016年まで。移籍金ゼロでの放出を避けたいユナイテッドとしては、マドリーと話し合う準備はできている。
チチャリートの登場は今、マドリーに新鮮な空気を持ち込んでいる。
クリスティアーノ・ロナウドとカリム・ベンゼマは、シーズンを通してほとんどの試合でプレーしてきたこともあり、コンディション的には100パーセントの状態にない。後者は負傷欠場中だ。一方、チチャリートは心身両面で最高潮にあり、積極的なスペースへのランニング、相手CBへの激しいプレッシングと、攻守両面でチームに貢献している。
しかし、である。ベンゼマが負傷から戻ってきたらどうなるだろう?
先発でピッチに立つのは、やはりこのフランス人ストライカーになるはずだ。チチャリートは、得点感覚やエリア内での動きでこそベンゼマを上回っているが、それ以外の部分、ボールキープやラストパス、つまりクリスティアーノやガレス・ベイルを活かすプレーにおいてはベンゼマが大きく上をいっている。
昨季で証明されたように、マドリーがチャンピオンズ・リーグで優勝するためには、チチャリートではなく、クリスティアーノとベイルが得点を取ることが大事なのである。その意味で、ベンゼマにはこれまでの実績もある。簡単にこれまでの序列がひっくり返ることはないのだ。
今、クラブやアンチェロッティがチチャリートを絶賛しているのは、ベンゼマを奮い立たせるためでもある。どこか穏やかなベンゼマは、競争がなければリラックスしてしまうところがある。しかし、チチャリートが活躍している今、ポジションを失わないためにも、彼のモチベーションはさらに高まっていくだろう。
つまり、私はこう見ている。今後のタイトル争いにおいて、本当の意味で鍵を握っているのは、メディアが大騒ぎして持ち上げているチチャリートではなく、彼のポジションに戻ってくるであろう、ベンゼマなのである。
文:パブロ・ポロ
翻訳:豊福晋
Pablo POLO|MARCA
パブロ・ポロ/マルカ
スペイン最大のスポーツ紙『マルカ』でレアル・マドリー番を務める敏腕記者。フランス語を操り、フランスやアフリカ系の選手とも親密な関係を築いている。アトレティコ番の経験もあり、首都の2大クラブに明るい。

現時点では、ロナウド(中央)、ベイル(左)と組ませるにはベンゼマ(右)が最適。とはいえ、チチャリートも現在の役割に満足することはない。両者の向上心が、さらなる攻撃のオプションをマドリーにもたらすかもしれない。 (C) Getty Images