やれることは全てやった感のあるミランが見せた限界と完敗劇――ナポリ 3-0 ミラン

カテゴリ:ワールド

サッカーダイジェストWeb編集部

2015年05月04日

数的不利をカバーしようとした本田だったが存在感は薄く…。

あの状況で“違い”を見せろと言うのは酷かもしれないが、背負うものが大きいのがミランの背番号10。活かされるのを待っていては、何も変わらないということか。 (C) Getty Images

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腑抜けたミランに魂を吹き込んだ? 開始直後に迎えたPKのピンチで、ディエゴ・ロペスが披露したスーパーセーブ。 (C) Getty Images

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 セリエA第34節、ミランは敵地でナポリに0-3の敗北。今シーズン初のリーグ戦3連敗を喫した。
 
 ジェレミー・メネーズ、フィリップ・メクセス、イグナツィオ・アバーテといった攻守で存在感を示してきた主力を出場停止で欠くミランにとって、ヨーロッパリーグで準決勝まで勝ち残っているナポリはあまりに強大な相手であり、どう見ても不利は否めなかった。
 
「気迫を見せて素晴らしいパフォーマンスを見せるのが何よりも大事。そのうえで、数字上はわずかに可能性の残る欧州カップ戦も狙えれば……」と試合前に語っていたフィリッポ・インザーギ監督だが、いきなり衝撃の場面を目の当たりにすることとなる。
 
 試合開始から40秒が過ぎた時、ロレンツォ・インシーニェからの縦パスでDFラインの裏に抜け出たマレク・ハムシクに対し、マッティア・デ・シリオが後方から足を払い、一発退場を食らったのである。
 
 ただでさえ分の悪い状況のなか、数的不利を負ったうえで、PKまで献上したミラン。早くもチーム崩壊の危機に瀕したが、ここでGKディエゴ・ロペスが見事な反応と横っ跳びでゴンサロ・イグアインのキックを弾き出した。
 
 ナポリが大部分の時間帯でボールを持ち、10人のミランは自陣に引いて守る展開となったが、ここからのミランは対人プレーで強さを見せ、攻めるナポリに決定的なチャンスを与えない。開始早々の守護神のスーパーセーブが各人の精神を研ぎ澄まさせたのだろうか、凡ミスも皆無ではなかったが、要所での集中力は高かった。
 
 攻撃はカウンターに頼るしかなかったが、7分に本田が相手ペナルティエリアまでボールを持ち込んでチャンスの一歩手前まで迫る。このプレーで、チーム全体に落ち着きがもたらされた。
 
 ミランは相変わらず攻守で組織が未熟であり、ひとりの選手が長くボールを持つことが多かったが、ここでは主審が接触プレーですぐに笛を吹く傾向にあったのが幸いし、危険な場面を凌いだり、攻撃のきっかけにしたりすることができた。
 
 長短のパスを駆使するナポリの攻撃は序盤こそ凄みすら感じさせたが、完全に引いたミランの守備を崩しきることはできず、徐々に雑になってくる。やや焦れた感もあり、ミランとしては大きな危機に陥ることなく前半を終えることができた。
 
 やや期待を持って臨んだ後半、ミランはやはり守勢を強いられるが、前半と違っていたのは、ボールを得ても全く攻撃を仕掛けることができなかったこと。チャンスを演出していたジャコモ・ボナベントゥーラが目立たなくなり、相手陣内深くに入り込む場面はほとんどなかった。
 
 まともな攻撃を見せられたのが、後半開始から10分を過ぎた頃。これほど一方的な展開になると、ナポリは守備のリスクを冒す必要がないまま、あらゆる攻撃を仕掛けることが可能になった。
 
 そして70分、DFラインの裏へのパスがクリアされたところをハムシクがインサイドで押し込んで、ナポリがついに先制。これでミランは攻めなければならなくなるが、守備を整えたナポリを数的不利の状況で攻め崩す術はなく、逆にボールを奪われれば即、鋭いカウンターを浴びることとなった。
 
 その後、サイドからDFラインの裏に入り込まれて瞬く間に2点を失ったミランだが、先制点を献上した時点で勝敗は決していたと言ってもいい。
 
 2試合連続スタメンの本田は、数的不利を何とかカバーしようと、豊富な運動量で守備にも積極的に絡んだ。攻撃では右サイドに張り続けることなく、ポジションを頻繁に変えて良い状況でボールを得ようとする積極的な姿勢も、前半には見られた。
 
 とはいえ、その存在感は決して濃かったとは言えない。ボールの持ち方やパスはさほど効果的ではなかった。ボナベントゥーラがボールを持つとチャンスの予感が高まったことも、背番号10の印象を悪くしたかもしれない。守備で奮闘したといっても、2、3失点目は右サイドを破られてのものだったということで、結果を出したとは到底言えない。
 
 攻守の主力不在、試合開始直後の緊急事態と、あまりに多くの災難に見舞われた今節のミランとしては、0-3という結果でも、「やれることは全てやった試合」と言えないこともない。同じ完敗とはいえ、やる気のあるなしが問われたウディネーゼ戦、サンプドリア戦とは、中味の違う試合だった。
 
 もっとも、だからといって将来に繋がる試合でもない。こんな試合でもポジティブな材料を見出してしまうことこそ、ミランがもはやかつての姿を完全に失ってしまったことの表われであると言えよう。

後半は試合から消えたボナベントゥーラだが、前半は本田よりも効果的なプレーを見せ、攻撃のリーダーの役割を果たしていた。 (C) Getty Images

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優れた攻撃のタレントを擁してミランを圧倒したナポリだが、なかなか点が取れないことで焦れ、強引なプレーに走ったり、雑なプレーが散見したりもした。EL制覇のためには、この点の改善が求められる。 (C) Getty Images

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