【CLポイント解説】大逆転を生んだバイエルンの“理に適った”攻撃

カテゴリ:ワールド

遠藤孝輔

2015年04月22日

合理性と娯楽性に富んだ勝者と最後まで諦めなかった良き敗者。

1)悔やまれる立ち上がりの消極性
 
 大きな注目ポイントは、ポルトの試合の入り方だった。本拠地で3-1の勝利を収めた第1レグ同様、アグレッシブなハイラインプレスを敢行するのか。あくまで失点回避にプライオリティーを置き、ひとまず受けに回るのか。ロペテギ監督が選んだのは、おそらく後者だった。
 
 逆転突破には攻めるしかないバイエルンに主導権を握られたのは、果敢に前へ出る攻撃的な守備が影を潜めた影響が大きい。もちろん、自慢のボール回しに乱れが生じただけでなく、第1レグと比べて、球際での競り合いをモノにする場面が激減した点も無関係ではなかったはずだ。
 
 消極的な印象が否めなかった前半のポルトはリズムに乗るきっかけさえ掴めず、1本のシュートも放てなかった。
 
2)両SB不在を突く理に適った崩し
 
 精彩を欠いた前半のポルトに容赦なく襲いかかったのが、リベリとロッベンを怪我で欠く不安を抱えていたバイエルン攻撃陣。第1レグとは打って変わり、不用意なパスミスやボールロストが減ったチアゴのゲームメークが光り、両ワイドに開いたゲッツェとラームと両SBを絡めたサイドアタックが冴え渡る。
 
 14分、敵陣でのゆったりとしたボール回しから、左サイドを抉ったベルナトがクロスを放ち、最後はチアゴが豪快なヘッドで先制点を叩き込んだ。ボアテングが決めた22分の追加点も、サイドの揺さぶりから得たCKが実を結んだものだ。
 
 ポルトのレギュラーSBであるダニーロとA・サンドロの出場停止による不在を突く理に適った崩しを完遂し、確実に2ゴールを叩き込んだバイエルンの勝負強さと、決定力の高さは非凡だった。
 
3)スペクタクル性に富んだ3点目
 
 バイエルンはその後も攻勢の手を緩めず、前半だけで大量5ゴールを叩き込んだ。なかでも、スペクタクル性に富んでいたのは3点目だろう。
 
 チアゴが右サイドの深部へのピンポイントパスで崩しの端緒を開くと、受け手となったラームがダイレクトでエリア内へ。その折り返しの浮き球に反応したミュラーも、丁寧なワンタッチで左前方に送る。そして、最後はレバンドフスキが力強いヘッドを叩き込み、超満員に膨れ上がったホームの大観衆は歓喜に包まれた。
 
 個々の高度なクオリティーに加え、コンビネーションプレーの魅力が凝縮されたこのゴールは、リベリとロッベン健在時でも滅多にお目にかかれないもの。ポルト守備陣に与えた精神的なダメージは計り知れなかったはずだ。
 
4)諦めなかったポルトの健闘
 
 全く見せ場を作れずに、0-5という絶望的なスコアでハーフタイムを迎えながら――この時点で準決勝進出には3ゴールが必要だった――、ポルトは決して勝負を捨てなかった。あらゆる選手が、最後まで攻守両面でのハードワークを実践。その敢闘精神は称賛に値するだろう。
 
 74分に生まれた主砲マルティネスの追撃弾が、あと10分でも早く決まっていれば……。そんな考えが脳裏をよぎりもした。4バックから3バックにシフトチェンジしたロペテギ監督の戦術変更がハマり、後半はボールポゼッションで敵を凌駕する時間が長く続いていたからだ。
 
 20歳の司令塔オリベルが伸び伸びとタクトを振るい、右サイドから21歳の新鋭リカルドが突破を図る攻撃は迫力に満ちていたし、後半は3バックのセンターを務めたカゼミーロのロングフィード1本で、マルティネスのフィニッシュに繋がった惜しいシーンも作り出していた。
 
 崖っぷちに追い込まれても心を折るどころか一矢を報いるなど、後半に関してはバイエルンと五分以上に渡り合ったポルトは“グッドルーザー”として、人々の記憶に残るのではないか。
 
文:遠藤孝輔

【写真で回想】バイエルン栄光のCL史

第1レグ敗戦後は、長年従事したドクターの辞任などで嫌なムードがチーム内にも流れたバイエルンだが、グアルディオラ監督と選手が十分に力を発揮して圧巻の大勝利を飾り、4年連続の準決勝進出を果たした。写真はレバンドフスキの3点目。 (C) Getty Images

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前半の戦い方が違っていれば……。後半は第1レグのようにバイエルンを押し込んだポルトだけに、消極的な戦法を選択してしまった最初45分間が悔やまれるところだが、ロペテギ監督はある程度の満足感を口にし、来シーズン以降でのリベンジを誓った。 (C) Getty Images

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