横浜FC対鳥栖のゲームを現地で観戦。ともに４-４-２のミラーゲームで、前半はホームの横浜FCがペースを握る時間が長く、松浦のゴールで先制に成功する。後半はマンツーマン気味に相手を捕まえに来た鳥栖がやや優勢となり、レンゾ・ロペスが同点弾をゲット。

　試合はそのまま１-１でタイムアップとなったけど、お互いにボールを大事にするサッカーを展開していて、最後まで目が離せない好ゲームだったと思う。

　個でクローズアップしたいのは、横浜FCの背番号30、ボランチの手塚康平だね。とりわけ前半のパフォーマンスは素晴らしかった。ほとんどミスなく、ボールを受けて、味方に渡して、を繰り返していた。

　とにかくシンプル。余計なことは考えないで、正確なパスを供給する。ダイレクトで捌くシーンが多いのは、周りの状況をしっかりと把握できている証拠。時間をかけずにボールを動かすから、チームのポゼッションも良いリズムが出てくる。

　パスを受ける側としても、ダイレクトですぐに出してくれたほうがいいんだよね。そこで時間をかけられると、その間に相手に寄せられて、パスを受けた時に苦しくなる。そういう意味でも、手塚のテンポの良いパス出しは味方を楽にしてくれると思う。

　そのパスひとつとっても、ただ単に出しているのではなく、メッセージがこめられているよね。こう出せば前を向けるでしょ、とか、これは相手を動かすためだからすぐリターンしてね、とか。全部が全部、上手くいっているわけではないと思うけど、イメージが共有された瞬間は、スムーズに局面を打開できているはず。

　ポジショニングも計算されていると思う。状況によっては、自陣と敵陣を問わず、ゴール前に顔を出したりするけど、基本的には中盤の真ん中あたりにいる。サボっているように見えるかもしれないけど、そうじゃない。守備でも攻撃でも、“こうなった時に、ここにいたほうがいい”という感じで、常に次の展開を予測して、準備しているからこそ、自然とピッチの中央にいることが多くなるんだろうね。
 

　動かないことで、相手のCFやボランチの動きを制限することにもつながるし、真ん中にいることでマーカーを引きつければ、その分、他のところでスペースが空いてくる。そのあたりも考えて、あえて動かないんだろうね。

　なんでもかんでもボールのあるところに行っても、全体のバランスが崩れるだけ。そこが崩れないように、手塚がチームの“へそ”となって攻守をつないでいる。

　決して派手なプレーヤーではない。もしかしたら地味に見えるかもね。でも、その影響力は絶大。存在感は抜群。高いテクニックを駆使して、当たり前のことを、当たり前にやる。それがどれだけチームの助けになっているか。派手ではないと言ったけど、強烈なミドルを持っているし、決定機を演出するスルーパスも出せる。高精度のセットプレーも武器のひとつだ。

　今季は横浜FCのホームゲームを観戦する機会が多いけど、手塚がいる時といない時では、ビルドアップもポゼッションも、やっぱりちょっと違うなというのが個人的な感想でもある。ボールを握ることを重視する横浜FCにとっては、欠かせないキーマン。シンプルかつクレバーなプレーは、サッカーの奥深さを改めて教えてくれるね。

【J１第31節PHOTO】横浜FC１－１鳥栖｜松浦のゴールで横浜FCが先制するも…途中出場のレンゾ・ロペスが貴重なゴール！激しい試合はドロー決着！