他国同様に、フランスでもフットボーラーの新型コロナウイルス感染が増えている。チャンピオンズ・リーグ（ＣＬ）のファイナリストとなったパリ・サンジェルマンでは、決勝直後に与えられた１週間の休暇中に、ネイマール、アンヘル・ディ・マリア、マウロ・イカルディ、ケイラー・ナバス、レアンドロ・パレデス、マルキーニョスが次々に感染、チームから離脱する事態になった。

　この６人はいずれも、CLが終わるやスペインのリゾート地イビサ島にバカンスに出て、妻子を含め、家族ぐるみの休暇を楽しんでいた。イビサ島は当時すでにクラスター化していたことから、スターたちの無責任行動が批判の的にもなった。

　だがその後、新たな事実が判明した。６人のうち何人かは、イビサ島到着直後にすでに軽いコロナ症状を確認していたというのだ。そこで光が当てられたのが、旅行前日に行われたネイマール宅でのパーティーだった。ネイマールの息子の誕生パーティーで、そこで選手たちが感染したのではないかとの仮説が成り立つからだ。

　６人の感染により、パリSGは、本来ならは２試合が吹き飛ぶ予定だった。だが試合延期の多発を恐れたプロフットボール連盟（LPF）が政府と保健当局に働きかけ、コロナ規則を緩和。「１チームに３人を超す感染者が出た場合は試合延期」とされていた規則を、ＵＥＦＡ規則に準じ、「１チーム20人のコロナ陰性メンバーが確保されれば試合敢行可能」と変更したのだった。

　これで、パリSGの休暇のせいですでに延期されていたリーグアン第２節ランス戦（10日）は、若手を集めてとりあえず実施されることに。また「クラシコ」ことマルセイユ戦（13日）も救われる格好となった。

　ところが、予期せぬことが起きた。ネーションズ・リーグ（ＮＬ）でフランス代表に招集され、スウェーデン戦（９月５日、０－１）で驚異の鋭角ゴールまで決めていたキリアン・エムバペまで、コロナ陽性になってしまったのである。

　コロナにいつどこで感染したかは、誰のケースでも特定が難しい。だがエムバペの場合は、あまりにも謎だった。

　そもそもエムバペは、すでに３～４月のコロナ禍中で親族に重症者が出て、その恐ろしさを目の当たりにした。このため自分が感染源にならないよう、非常に注意を払ってきた。イビサ島にももちろん行かず、青春時代を過ごしたモナコで休暇を過ごしたという。

　そして８月30日のコロナ検査でも陰性となり、翌31日からのクレールフォンテーヌ（フランス代表の本拠地）合宿に合流。次いでスウェーデン戦に先立つ９月２日のコロナ検査でも陰性となり、前述のゴールでフランス勝利に貢献した。

　それなのに９月７日夜、突如エムバペのコロナ陽性（無症状）が判明。エムバペは慌ただしく代表を離れ、自宅に籠ることとなった。もともとデシャン監督は翌日のクロアチア戦（８日、４－２）でエムバペを休ませる予定にしていたため、ピッチ上に衝撃はなかったが、問題は「いつどこで？」だった。新型コロナウイルスの潜伏期は、個人差はあるものの３～７日と判明しているからだ。