エトーを主人公にした伝記映画の製作が目的。
移籍市場を専門的にカバーするジャンルカ・ディ・マルツィオ記者が、メルカート(移籍マーケット)の舞台裏を明かす! この冬のとっておきのエピソードをお届けしよう。
(ワールドサッカーダイジェスト2015.3.5号より)
――◆――◆――
この冬もまた、カルチョメルカートはさまざまなドラマに彩られた。最終的に移籍が成立してハッピーエンドで終わったストーリーもあれば、土壇場で破談になったり、話がまとまらずに延期になったストーリーもある。あるいは、一度も表に出ることなく秘密裡に終わった話もある。
そのひとつが、シャルケのガーナ代表MF、ボアテングのディナモ・モスクワ行きだ。移籍期限まであと数日となったところで、D・モスクワがシャルケに攻勢をかけ、16年6月に切れる契約をどうしても更新したいわけではないシャルケ側も、条件次第では放出にやぶさかではないという立場だったため、話はかなり具体的なところまで進んだ。
ボアテングの年俸要求額と、D・モスクワのオファーが折り合わないまま時間切れになり移籍は実現しなかったが、夏に向けて話が再燃する可能性は十分にある。
ボアテング自身は、生まれ育ったドイツのトップクラブでプレーしている現状に満足しており、モスクワ行きにそれほど積極的ではなかったようだ。
これに対してシャルケは、ボアテングの年俸が600万ユーロ(約8億4000万円)と高額なこともあり、本人が移籍を望むならば止めないという立場。D・モスクワに在籍する元ドイツ代表FWクラーニィが、仲のいいボアテングを熱心に誘っているという話もある。
今冬のメルカートで最大のサプライズは、エトーのサンプドリア入りだろう。この移籍はミハイロビッチ監督の意向とはまったく無関係に、サンプドリアのオーナーで映画プロデューサーが本業のマッシモ・フェレーロ会長の一存で進められ、実現したものだ。
実を言えば、フェレーロ会長の真の狙いは、戦力としてのエトーではなく、アフリカ大陸でもっとも大きな影響力を持つ有名人としてのエトーにある。
交渉時から話題に上っていたように、フェレーロはエトーを主人公にした伝記映画を製作して全世界で公開し、一儲けしようと企んでいるのだ。
エトー本人、そして実際に彼の人生に関わった人々が登場人物となって、カメルーンの貧しい路傍から世界の頂点に立つまでのサクセスストーリーを収めた、サッカー映画史上に残る一大ドキュメンタリー伝記映画を作るというのが、フェレーロの壮大な野望だ。
実際エトーは、アフリカで信じられないほどの知名度を誇り、ネルソン・マンデラ(元南アフリカ大統領)亡き今、大陸全域でもっとも人気のあるヒーローだと言っていい。彼のフェイスブックには600万人以上のフォロワーがいて、本人はこれを2000万人にまで増やしたいと思っているという。
それほどのスーパースターだけに、移籍交渉は簡単ではなかった。もっとも大きなポイントとなったのが、肖像権の扱い。エトーはアフリカ向けにたくさんのスポンサーを抱えており、肖像権をクラブに渡すことを受け入れるわけにはいかない。
しかしフェレーロにしても、エトーを使ってビジネスをしようとすれば、肖像権を持っていないと話にならない。最終的には、肖像権収入はクラブとエトーが折半するという話で決着した。
映画の興行収入に関しても同じ条件だ。サンプドリアは、エトーが前所属のエバートンから貰っていた350万ユーロ(約4億9000万円)の年俸を用意できない弱みもあって、50
パーセントという条件で折り合わざるをえなかった。年俸は150万ユーロ(約2億1000万円)+ボーナス。ボーナスの額は、出場試合、得点、アシストなど成績によって決まる。
(ワールドサッカーダイジェスト2015.3.5号より)
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この冬もまた、カルチョメルカートはさまざまなドラマに彩られた。最終的に移籍が成立してハッピーエンドで終わったストーリーもあれば、土壇場で破談になったり、話がまとまらずに延期になったストーリーもある。あるいは、一度も表に出ることなく秘密裡に終わった話もある。
そのひとつが、シャルケのガーナ代表MF、ボアテングのディナモ・モスクワ行きだ。移籍期限まであと数日となったところで、D・モスクワがシャルケに攻勢をかけ、16年6月に切れる契約をどうしても更新したいわけではないシャルケ側も、条件次第では放出にやぶさかではないという立場だったため、話はかなり具体的なところまで進んだ。
ボアテングの年俸要求額と、D・モスクワのオファーが折り合わないまま時間切れになり移籍は実現しなかったが、夏に向けて話が再燃する可能性は十分にある。
ボアテング自身は、生まれ育ったドイツのトップクラブでプレーしている現状に満足しており、モスクワ行きにそれほど積極的ではなかったようだ。
これに対してシャルケは、ボアテングの年俸が600万ユーロ(約8億4000万円)と高額なこともあり、本人が移籍を望むならば止めないという立場。D・モスクワに在籍する元ドイツ代表FWクラーニィが、仲のいいボアテングを熱心に誘っているという話もある。
今冬のメルカートで最大のサプライズは、エトーのサンプドリア入りだろう。この移籍はミハイロビッチ監督の意向とはまったく無関係に、サンプドリアのオーナーで映画プロデューサーが本業のマッシモ・フェレーロ会長の一存で進められ、実現したものだ。
実を言えば、フェレーロ会長の真の狙いは、戦力としてのエトーではなく、アフリカ大陸でもっとも大きな影響力を持つ有名人としてのエトーにある。
交渉時から話題に上っていたように、フェレーロはエトーを主人公にした伝記映画を製作して全世界で公開し、一儲けしようと企んでいるのだ。
エトー本人、そして実際に彼の人生に関わった人々が登場人物となって、カメルーンの貧しい路傍から世界の頂点に立つまでのサクセスストーリーを収めた、サッカー映画史上に残る一大ドキュメンタリー伝記映画を作るというのが、フェレーロの壮大な野望だ。
実際エトーは、アフリカで信じられないほどの知名度を誇り、ネルソン・マンデラ(元南アフリカ大統領)亡き今、大陸全域でもっとも人気のあるヒーローだと言っていい。彼のフェイスブックには600万人以上のフォロワーがいて、本人はこれを2000万人にまで増やしたいと思っているという。
それほどのスーパースターだけに、移籍交渉は簡単ではなかった。もっとも大きなポイントとなったのが、肖像権の扱い。エトーはアフリカ向けにたくさんのスポンサーを抱えており、肖像権をクラブに渡すことを受け入れるわけにはいかない。
しかしフェレーロにしても、エトーを使ってビジネスをしようとすれば、肖像権を持っていないと話にならない。最終的には、肖像権収入はクラブとエトーが折半するという話で決着した。
映画の興行収入に関しても同じ条件だ。サンプドリアは、エトーが前所属のエバートンから貰っていた350万ユーロ(約4億9000万円)の年俸を用意できない弱みもあって、50
パーセントという条件で折り合わざるをえなかった。年俸は150万ユーロ(約2億1000万円)+ボーナス。ボーナスの額は、出場試合、得点、アシストなど成績によって決まる。