大黒柱も“大砲”もいない。開幕に向け不安が先行する内容
サッカーの世界では、よくある結末だった。
お互いにチャンスがありながら決め手を欠き、時間だけが過ぎていく。その結果、試合終了間際の後半ロスタイムに大きなミスを犯したのが横浜で、J1に昇格したばかりの松本に金星を献上した。敵将の反町康治監督が「向こう(横浜)が躓いて土俵に転んだ」と話したとおりである。
ただ、リーグ戦本番ではないのだから、ミスと結果を反省しつつも内容に目を向けるべきだろう。エリク・モンバエルツ監督が就任したチームの、開幕2週間前の現在地こそが焦点である。
結論から言えば、「あれ、去年と一緒だね、と言われかねない」(中澤佑二)。
システムはお馴染みの4-2-3-1を採用し、スタメンに並んだ11人も昨季とほとんど変わらない。プロ3年目の喜田拓也をボランチに、そしてユース所属で2種登録の和田昌士が1トップに抜てきされたが、主力選手の負傷離脱による“繰り上げ人事”の印象が強い。
試合ではGKの榎本哲也からショートパスをつないでビルドアップする戦い方を徹底。しかし、これが松本のハードプレスの格好の餌食となった。
「かなり狙われていた」と中澤は苦い表情を見せる。本番の公式戦であれば、あそこまで極端にビルドアップに固執することはないだろうが、少なくともこの日はボールを奪われた次のプレーでも、GKからの組み立てを繰り返した。
そこで浮上するのが、大黒柱でビルドアップの中心を担う中村俊輔の不在である。中盤の底に下がって攻撃を組み立てる稀代のゲームメーカーがいないことで、攻撃が効果的に回らない。2ボランチはボールを前へ運ぶ能力が不足しており、これでは2列目の選手の機動力を活かせない。中澤は「ボールを落ち着かせることができるのは彼ならでは」と、あえて中村の特長を話すことで、その不在の影響を表現している。
それでも1トップに、例えばG大阪のパトリックのような身体能力に優れた“大砲”がいれば攻撃の選択肢も増えるだろうが、このポジションは現在最も手薄な状態である。
和田は可能性を秘めたプレーを見せたものの、後半途中から約30分間プレーしたラフィーニャはまだ万全の状態ではなく、伊藤翔もようやく病気が完治した状況だ。
この日は最後の最後にミスから失点したが、中澤と栗原勇蔵を中心とした堅い守備は今季も健在だろう。対照的に、積年の課題である脆弱な得点力に加え、攻撃の組み立てでは力不足が否めない。現時点ではチーム作りが順調とは言えず、リーグ開幕に向けて不安が先行するプレシーズンマッチとなった。
取材・文:藤井雅彦(ジャーナリスト)
■試合結果■
2015 Jリーグプレシーズンマッチ AED普及マッチ
横浜 0 0-0 1 松本
0-1
得点者/横=なし 松=鐡戸(90+2)
お互いにチャンスがありながら決め手を欠き、時間だけが過ぎていく。その結果、試合終了間際の後半ロスタイムに大きなミスを犯したのが横浜で、J1に昇格したばかりの松本に金星を献上した。敵将の反町康治監督が「向こう(横浜)が躓いて土俵に転んだ」と話したとおりである。
ただ、リーグ戦本番ではないのだから、ミスと結果を反省しつつも内容に目を向けるべきだろう。エリク・モンバエルツ監督が就任したチームの、開幕2週間前の現在地こそが焦点である。
結論から言えば、「あれ、去年と一緒だね、と言われかねない」(中澤佑二)。
システムはお馴染みの4-2-3-1を採用し、スタメンに並んだ11人も昨季とほとんど変わらない。プロ3年目の喜田拓也をボランチに、そしてユース所属で2種登録の和田昌士が1トップに抜てきされたが、主力選手の負傷離脱による“繰り上げ人事”の印象が強い。
試合ではGKの榎本哲也からショートパスをつないでビルドアップする戦い方を徹底。しかし、これが松本のハードプレスの格好の餌食となった。
「かなり狙われていた」と中澤は苦い表情を見せる。本番の公式戦であれば、あそこまで極端にビルドアップに固執することはないだろうが、少なくともこの日はボールを奪われた次のプレーでも、GKからの組み立てを繰り返した。
そこで浮上するのが、大黒柱でビルドアップの中心を担う中村俊輔の不在である。中盤の底に下がって攻撃を組み立てる稀代のゲームメーカーがいないことで、攻撃が効果的に回らない。2ボランチはボールを前へ運ぶ能力が不足しており、これでは2列目の選手の機動力を活かせない。中澤は「ボールを落ち着かせることができるのは彼ならでは」と、あえて中村の特長を話すことで、その不在の影響を表現している。
それでも1トップに、例えばG大阪のパトリックのような身体能力に優れた“大砲”がいれば攻撃の選択肢も増えるだろうが、このポジションは現在最も手薄な状態である。
和田は可能性を秘めたプレーを見せたものの、後半途中から約30分間プレーしたラフィーニャはまだ万全の状態ではなく、伊藤翔もようやく病気が完治した状況だ。
この日は最後の最後にミスから失点したが、中澤と栗原勇蔵を中心とした堅い守備は今季も健在だろう。対照的に、積年の課題である脆弱な得点力に加え、攻撃の組み立てでは力不足が否めない。現時点ではチーム作りが順調とは言えず、リーグ開幕に向けて不安が先行するプレシーズンマッチとなった。
取材・文:藤井雅彦(ジャーナリスト)
■試合結果■
2015 Jリーグプレシーズンマッチ AED普及マッチ
横浜 0 0-0 1 松本
0-1
得点者/横=なし 松=鐡戸(90+2)