“ゲーム感覚を楽しめる”フットボーラーが生き残る【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2019年10月27日

フランス代表が実施した「実験」で導き出されたのは…

ボールが自分の目の前に転がってくるかどうか。FWにはそれを楽しむ度量も求められる。(C)Getty Images

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 フランス代表が実施した「実験」で導き出されたのは…

 フランス代表監督だったローラン・ブランが、選手たちに対して一つの実験を行ったことがあった。

 時間を決めて、選手を集合させる。選手たちは集合時間の前後、どの時間帯に到着するのか。単純に、その分布図を調査したという。

 集合理由は、トレーニングではない。ただのミーティング。トレーニングの場合は2時間以上前に来て、身体を起こすような作業をする選手もいるからだ。

 実験の結果、どうなったか?

 8割以上の選手が、集合時間ジャストか、数秒数分のずれで集まったという。

 その実験から導き出された検証結果は、こうだ。
 
<選手は集合時間ギリギリに集まる。間に合わないかも、という不安も含め、ゲーム感覚で楽しんでいる。もしくはその習性を持つものだ>

 その感覚は、誰が教えたものでもない。遅れないように、しかし間に合うかどうか。子供っぽい遊びだ。

 しかし、その緊張を楽しめるか――。それがサッカー選手としての適性に通じるという。

「社会性がない」

 そういう批判も出るかもしれない。たしかに、30分から10分前に到着するのを目指せば、何かあったとしても対処できる。社会人としては素晴らしいリスクマネジメントだ。

 しかし、一か八かのような世界で生きる者は少なからず、それを日常的に楽しむところがある。鶏が先か、卵が先か。無邪気さを持つ者が、博打のようなプロサッカーで生き残れるのだ。

 もし運が悪かったら、交通機関の渋滞や事件、事故などで遅れる可能性もある。ただ、そこで腹をくくれるか。「勝負に挑む人間として運がない」ということだろう。

 そう考えると、なんともくだらないゲームかもしれない。しかし、勝負ごとに対してはなんにでも夢中になって、それを心から楽しめる。その無垢な子供っぽさこそが、プロサッカー選手の活力の源になっている。かつてジーコはどんな勝ち負けにもこだわったという。

「ゲーム感覚」

 それは侮れない。

 実験では、ぎりぎりを狙って5分以上遅刻するような選手もいたという。その選手はその後、チームに残らなかった。つまり、ゲームに負けるような選手は、真剣勝負で勝つことはできない。それは怠惰さにもつながる。

 プロとして必要なしたたかさも、運も、そして規律も、どれもこれも欠けているということだ。
 
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