鹿島特有の「老獪さ」は失われつつあるのか
[J1第9節]横浜2-1鹿島/4月28日/日産ス
「なんすかね……めちゃくちゃもったいない試合だった」
痛恨の逆転負けを喫した横浜戦をそう悔やんだ鹿島の伊藤翔は、「1-0、ないしは2-0で楽々終われるゲームだったっていう。そういう手応えはあった」という。前半に安西幸輝のゴールで幸先良くリードを奪ったが、後半に2失点。伊藤は「これで勝てないのは、ちょっときつい」と肩を落とした。
「前半はある程度、守備が機能していて、向こうにも何もやらせずにできた」
ところが、後半にエラーが生じる。
「徐々にこっちのプレスが緩くなって、行かなければいけないところで行けなくなった。体力的な問題なのか、頭の中でちょっとサボり始めたのか分かりませんが、そこでちょっとずつズレ始めると、綻びは出てくるかなという感じですね」
さらに伊藤が「後半は、ラインが低すぎたかもしれない」と語れば、CBの町田浩樹も「ずるずると下がってしまった」と同調する。その理由については「スライドが間に合わなかったり、相手も少しバランスを崩して、サイドに人数をかけてきたというのもある。ボールを奪ってからの自分たちの攻撃も、広いところで展開できなかったり。そういういろんなことが重なって下がってしまった」と語る。
横浜のポゼッションに圧倒された部分はあったかもしれないが、たとえ攻め込まれても、同点とされるまでは「最後の最後、局面で守れていた」(町田)のも事実だ。ともすれば、そうした“ゴール前での強固さ”が、チーム全体でピンチの芽を未然に潰すことへの意識を薄れさせてしまったのかもしれない。
相手にボールを“持たせている”というケースもあるが、今回の横浜戦に関しては、時間の経過とともに一人ひとりが疲弊し、余裕がなくなり、四苦八苦しているように見えた。押し込まれるなかで個々の守備の強度を前半と同じように保てなくなり、寄せも甘くなり、正常な判断に支障をきたす。横浜はその隙を見逃してはくれなかった。
劣勢の展開を撥ね返すべく、攻撃を繰り出そうとしても、重心が低いままでは、“腰が重くて”迫力を持って前に出られない。
1-0で勝ち切る、あるいは効率的なカウンターで勝負を決める2点目を奪う。そうした勝ちパターンがどんな相手にも通じなくなってきた印象だ。鹿島特有の「老獪さ」が失われつつあるのではないか。
現状を憂う伊藤は危機感を募らせる。
「ここはちょっとね、ターニングポイントじゃないけど、良いほうにも悪いほうにも転ぶ危ない時期かもしれない。今こそチーム一体になって、まとまってやっていかないと、一気にバラバラになる可能性もある」
もちろん、諦めているわけではない。悲壮感を漂わせながら、次の戦いに目を向ける。
「自分たちで良い方向に持っていかないといけない。それができるのは自分たちだけだから。やるしかない」
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
【横浜FM2-1鹿島 PHOTO】平成最後”オリ10”対決は横浜FMに軍配!!マルコス・ジュニオールの豪快弾で逆転勝利
「なんすかね……めちゃくちゃもったいない試合だった」
痛恨の逆転負けを喫した横浜戦をそう悔やんだ鹿島の伊藤翔は、「1-0、ないしは2-0で楽々終われるゲームだったっていう。そういう手応えはあった」という。前半に安西幸輝のゴールで幸先良くリードを奪ったが、後半に2失点。伊藤は「これで勝てないのは、ちょっときつい」と肩を落とした。
「前半はある程度、守備が機能していて、向こうにも何もやらせずにできた」
ところが、後半にエラーが生じる。
「徐々にこっちのプレスが緩くなって、行かなければいけないところで行けなくなった。体力的な問題なのか、頭の中でちょっとサボり始めたのか分かりませんが、そこでちょっとずつズレ始めると、綻びは出てくるかなという感じですね」
さらに伊藤が「後半は、ラインが低すぎたかもしれない」と語れば、CBの町田浩樹も「ずるずると下がってしまった」と同調する。その理由については「スライドが間に合わなかったり、相手も少しバランスを崩して、サイドに人数をかけてきたというのもある。ボールを奪ってからの自分たちの攻撃も、広いところで展開できなかったり。そういういろんなことが重なって下がってしまった」と語る。
横浜のポゼッションに圧倒された部分はあったかもしれないが、たとえ攻め込まれても、同点とされるまでは「最後の最後、局面で守れていた」(町田)のも事実だ。ともすれば、そうした“ゴール前での強固さ”が、チーム全体でピンチの芽を未然に潰すことへの意識を薄れさせてしまったのかもしれない。
相手にボールを“持たせている”というケースもあるが、今回の横浜戦に関しては、時間の経過とともに一人ひとりが疲弊し、余裕がなくなり、四苦八苦しているように見えた。押し込まれるなかで個々の守備の強度を前半と同じように保てなくなり、寄せも甘くなり、正常な判断に支障をきたす。横浜はその隙を見逃してはくれなかった。
劣勢の展開を撥ね返すべく、攻撃を繰り出そうとしても、重心が低いままでは、“腰が重くて”迫力を持って前に出られない。
1-0で勝ち切る、あるいは効率的なカウンターで勝負を決める2点目を奪う。そうした勝ちパターンがどんな相手にも通じなくなってきた印象だ。鹿島特有の「老獪さ」が失われつつあるのではないか。
現状を憂う伊藤は危機感を募らせる。
「ここはちょっとね、ターニングポイントじゃないけど、良いほうにも悪いほうにも転ぶ危ない時期かもしれない。今こそチーム一体になって、まとまってやっていかないと、一気にバラバラになる可能性もある」
もちろん、諦めているわけではない。悲壮感を漂わせながら、次の戦いに目を向ける。
「自分たちで良い方向に持っていかないといけない。それができるのは自分たちだけだから。やるしかない」
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
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