【2019年のJ注目株】「私が死んでも帰って来るな」実業団バスケMVPの亡き母は山形CB栗山直樹をいかにして育てたのか?

カテゴリ:Jリーグ

頼野亜唯子

2019年01月09日

トップアスリートだった母からずっと言われていた「失点はすべて自分のせいだと思いなさい」

昨季、自身のキャリア最高の36試合に出場した栗山。今季も主軸としての活躍が期待される。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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「あれは、母が取らせてくれたゴールだと思います」

 昨年9月30日に行なわれたホーム松本山雅FC戦の後半、モンテディオ山形のCB栗山直樹が決めたゴール。CKから汰木康也の折り返しを左足ボレーで叩き込み、2点のビハインドを1点差にした栗山は一瞬、天を仰いで両手で指し示す。10日前に亡くなった母へのゴールの報告だった。その思いを聞けたのは、つい最近のことである。

 今季がプロ6年目。専修大で活躍して2013年に千葉に加入した栗山は、怪我の影響もありプロデビューは3年目にまでずれ込んだ。2016年に山形に移籍して出場機会は増えたが、いつも高いパフォーマンスを出せていたとは言えない。5年間の通算出場数は33試合に留まっている。

 ところが、27歳で迎えた2018年シーズンは36試合に出場。5年間の試合数を1年で超えた。試合を重ねるごとに安定感を増し、3バックのセンターに定着し奮闘した。元々の持ち味だった空中戦の強さに加え、1プレー、2プレー先を予測してパスやシュートのコースを塞ぐクレバーな守備でチームを助けた。開幕当初は守備に不安を抱いていた木山隆之監督も、「まだ足りない」と釘を刺しながらも成長の幅には目を細める。昨年の山形のMVPは誰かと聞けば、チーム得点王の小林成豪や天皇杯で活躍した汰木康也に比肩して、栗山を候補に挙げるサポーターは少なくない。それほどまでに、栗山は山形の守りを担う存在になった。

 栗山は、10歳でサッカーを始めた当時からずっとディフェンダーだった。その頃から、母親には「失点はすべて自分のせいだと思いなさい」と言われていたという。

 「どんなことがあっても自分が最後のところで頑張れば止められるし、止められるようになりなさいと、ずっと言われていました」
 
 母・春美さん(旧姓・大山、享年59歳)は、1977年から84年まで実業団女子バスケットボールの強豪・シャンソン化粧品で活躍したトップアスリートだ。キャプテンを務めたこともあり、日本リーグ優勝時にはMVPも受賞している。現役引退後もバスケットを愛し、40歳を過ぎてから審判員の資格を取得し、2014年までAA級(現在のS級にあたる)審判としてコートに立った。
 
 以前、栗山にサッカー人生の歩みをインタビューしたことがあるが、それを語るには春美さんの存在が欠かせないことが伝わってきた。母のもとでは、何事に対しても中途半端は許されなかった。中学生の頃、トレーニングで家の近くのコースを走ることがあった。気の抜けた走り方をしていると、見とがめた春美さんが腕組みをして立っていた。「やる気がないならやめなさい」と、チームメートの目の前で叱責されたという。
 
 プレーへのダメ出しもあった。サッカー経験はなくても、トップレベルの競技者だった母の目は的確で、栗山は「なんでそんなところまで分かるんだよ……と思いながら、言われたところを練習しました」と語ったものだ。苦笑するその顔は、どこか誇らしげだった。

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