数か月前からバルセロナは冬の移籍市場でCBを補強することを考えていた。

　膝の故障で保存治療を受けているサミュエル・ウンティティに復帰のメドが立っておらず、その代役候補としてマタイス・デリフト（アヤックス）、ジャン＝クレア・トディボ（トゥールーズ）、アンドレアス・クリステンセン（チェルシー）と、将来性豊かな若手をリストアップしていた。

　しかし、移籍市場のオープンを半月後に控えた12月中旬にさらなるアクシデントがバルサを襲う。トーマス・ヴェルメーレンがふたたび故障したのである。２か月近くの戦線離脱を経て復帰した直後の今シーズン２度目の怪我であり、入団以来悩まされている故障の多さが、またしても顔を覗かせてしまった格好だ。

　これでCB４人体制でシーズンに臨んでいたバルサは、そのうちふたりを怪我で失うことになり、コパ・デル・レイが本格化する年明けのハードスケジュールを、ジェラール・ピケとクレマン・ラングレのふたりで乗り切らなければならない状況に陥った。

　この緊急事態を受け、バルサはともに19歳と若いデリフトやトディボらCBを冬に獲得し、半年間の経験を積ませたうえで来シーズンからレギュラー格として本格的に働いてもらうという当初描いていた構想を断念した（トディボは来夏の入団が決定）。

「ラ・リーガでのプレー経験が豊富な即戦力のCB」というエルネスト・バルベルデ監督のリクエストを受けて、バルサ首脳が白羽の矢を立てたのは、マルセリーノ・ガルシア・トラル監督との関係がこじれ、バレンシアで戦力外同様の扱いを受けていたジェイソン・ムリージョだった。

　バルサがコンタクトを取ると、移籍を志願していたムリージョ、このコロンビア代表の受け入れ先を探していたバレンシアと、三者の思惑が見事に一致。今シーズン終了までのレンタルという形で、2500万ユーロ（約32億5000万円）の買い取りオプションが付くことなど、合意に達するまで24時間もかからなかった。
 

　ムリージョにとって今回の移籍は、突如舞い込んだビッグチャンス。もともとポテンシャルの高さには定評があり、2013‐14シーズンにグラナダでこのコロンビア代表を指導したルーカス・アルカラス監督は、当時をこう振り返る。

「すぐに１部リーグでやっていける選手だと確信した。これといった弱点がないし、フィード能力にも光るものがあった。粗削りなところも多々見られたが、毎試合終わるたびに課題を洗い出し、ビデオを一緒に見ながらポジショニングや戦術面のミスを改善していったんだ」

　このグラナダでの活躍が認められ、ムリージョは2015年夏にインテルに加入。さらにその２年後にはバレンシアへ移籍と、強豪クラブを転々としながら経験と実力を磨いていった。

「スピード、インテリジェンス、足元のテクニック、旺盛な闘争心」

　バルサ入団の際、ムリージョはみずからのセールスポイントを列挙し、自信を覗かせた。クラブに獲得を進言したバルベルデ監督の期待に応え、６か月の間にその価値を証明できるのか。試用期間を経て正式契約を勝ち取れるかどうかは、すべてムリージョの活躍にかかっている。

文●ジョルディ・キシャーノ（エル・パイス紙／バルサ番記者）
翻訳：下村正幸
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