バルセロナがここにきてラ・リーガで４連勝とギアを上げてきた。

　エルネスト・バルベルデ監督や選手たちが口を揃えて「分岐点となった」と話すのが、リーグ戦では約６年半ぶりのホーム敗戦となった11月11日のベティス戦（３‐４）だ。

　数字がチームの好調を裏付ける。それまで全公式戦18試合で19失点を食らい、１試合あたりの平均失点は1.05点だったが、それ以降は８試合で４失点。平均失点は0.5点に激減した。

　その要因として挙げられるのが、DFリーダーのジェラール・ピケを筆頭とする選手たちのパフォーマンスの向上、そしてCLのグループステージ突破を２試合を残して確定させたことで、大胆なローテーションの導入が可能になったことによるチーム全体、とりわけ中盤の選手の運動量の増加である。

　このチームの好調に寄与しているのが、アルトゥーロ・ビダルとウスマンヌ・デンベレの両選手。ともにトラブルメーカーとしてメディアを騒がせ、クラブ関係者からも注意を受けたが、ビダルはアルトゥールの怪我、デンベレはフィリッペ・コウチーニョの低調なパフォーマンスに乗じて出場機会を得ており、このままレギュラーの座を奪取する勢いだ。
 

　得点、アシストで目立った活躍を見せているデンベレもさることながら、上昇気流を描くチームにあって戦術上のキーマンとして機能しているのがビダルだ。

　バルベルデ監督が昨シーズン、攻守のバランスを重視し、ネイマールの離脱後にシステムを４－４－２に変更したのは周知の通り。今シーズン序盤はポゼッションを安定させるためにコウチーニョを左FWに、アルトゥールを左インサイドMFに常時起用した。しかしコウチーニョを含めた前線の守備面での貢献が低く、アルトゥールの運動量の少なさも重なり、中盤が間延びして攻守が分断。それが失点の増加へと繋がっていた。

　そこでベティス戦の敗北を境にバルベルデ監督は、コウチーニョ、アルトゥールに代えてデンベレ、ビダルをそれぞれ重用しはじめた。

　ビダルはそれまでイバン・ラキティッチが務めていた右インサイドMFのポジションに入り、チーム関係者曰く、「レオ（メッシ）が動くことによって生じたスペースをケアしながら、ネウソン・セメドを背後からカバーする」タスクを担当。持ち前の運動量とガッツで攻守両面において高い貢献を見せている。

　さらに玉突き現象で左インサイドにポジションを移したラキティッチは、同じチーム関係者の言葉によると、「デンベレをフォローしながら、ジョルディ・アルバの帰陣の遅れから生じるスペースを軌道修正する」役割を担っているという。

　ジョルディがオーバーラップを仕掛ける頻度が多い分、ビダルと比べてマイボール時にも攻撃参加を自重する意識が強く、持ち前の戦術眼の高さを活かしてセルヒオ・ブスケッツとともに相手のカウンターの芽を摘む重要な貢献を果たしている。

　アルトゥールに比べてポゼッション戦術への適正は見劣りするが、ビダルにはその分、縦への推進力、対人プレーの激しさ、無尽蔵のスタミナがある。チリ人MFの融合が周囲にポジティブな化学反応をもたらし、それが守備力の向上へと転じてチームの復調を後押ししている。

文●ジョルディ・キシャーノ（エル・パイス紙／バルサ番記者）
翻訳：下村正幸
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