[高校選手権・２回戦]前橋育英２-０宇和島東／１月２日／浦和駒場
 
　前橋育英のスタメン表を見て、正直驚いた。これまでレギュラーを張っていた選手がスタメンにいないことにすぐに気が付いた。CB吉田和暉、アルビレックス新潟内定のボランチ・秋山裕紀、左のアタッカー・森隼平の名前がベンチにあり、スタメンにはCB府川宙史、ボランチ・鏑木瑞生、左MF水多海斗の名前が。
 
「２週間前にスタメン組で練習するようになった」府川と、サニックス杯まではレギュラーだったが、それ以降はBチームでプレーしていた部長の鏑木、そしてプリンス関東最終節の矢板中央戦で高校初のAチームスタメンとなった水多。３人とも下から這い上がって来た選手だった。
 
「部長でありながら、僕は春以降ずっとAに上がれなかった。本当に悔しかったし、情けなかった。でも、絶対に巻き返してやると思っていた」と鏑木が語ると、水多も「悔しかった。でも、しっかりと下で実力を付けておけば、チャンスを掴めることを信じていた」と語ったように、まさに意地と努力で掴み獲ったスタメン出場だった。
 
　３人は毎年Bチームとして出場する関東大会予選、関東大会に出場していた。今年の関東大会で優勝を果たすと、大会直後にDF塩田直輝、CB吉田和暉、FW石井陽向の３人がBチームからAチームのレギュラーに抜擢された。
 
「正直、『行かれちゃったな』という想いの方が強かったのですが、絶対に負けたくないので、練習からAチームのレギュラーを奪うことをより意識するようになった」
 
　這い上がっていった仲間に刺激され、下を向くことなく「俺も」と上だけを見てやり続けた。そして、高校最後の大会となる選手権の初戦という重要な一戦で、３人はピッチに立った。
 
　前半18分、前橋育英は右CKを得ると、「キックは自分の武器」と語る水多が正確なキックを送り込み、これをFW室井彗佑が倒れ込みながらも右足で突き刺して、先制点をもたらした。その後は宇和島東の精度の高いショートカウンターに手を焼き、ピンチを迎える場面もあったが、シュートまでは持ち込ませなかった。