[高校選手権・２回戦]都市大塩尻０－１瀬戸内／１月２日／味フィ西
 
　偉大な先輩の期待に初勝利で応えた。選手権初出場の瀬戸内が、同校ＯＢの安部裕葵（鹿島アントラーズ）が見守った２回戦で都市大塩尻を撃破。２年生ＣＦの中川歩夢が奪った１点が決勝点になり、１－０で３回戦に駒を進めた。
 
　試合は、立ち上がりから瀬戸内がペースを握った。「プレスをしっかりかけるように指示していたが、それ以上に向こうがしっかりボールを支配して、リズムがどんどん傾いていった」と都市大塩尻の高橋裕之監督が振り返ったように、巧みなポゼッションで相手を翻弄し、ジワジワと敵陣に攻め入っていく。そうして迎えた前半22分、縦パスを受けた中川がドリブルで持ち込み、ペナルティエリア外からミドルをねじ込んだ。
 
　後半は都市大塩尻の猛攻を受けて防戦に回ったが、「なんとかゴール前で身体を張って守ってくれた」（安藤正晴監督）という懸命な守備でゴールは許さず。アディショナルタイムの３分間も耐え抜いて歓喜の瞬間を迎えたのだ。
 
　４－３－３のインサイドハーフで奮闘したキャプテンの佐々木達也は、試合後に勝利を喜び、こう明かしてくれた。
 
「（ＯＢの安部が）練習会場に昨日来てくれて、アドバイスというか『自信を持ってプレーしろ』とか、明るい声かけをしてくれました。『自信を持ってプレーしろ』というのは心強い言葉なので、そこを意識して戦いました。世界で戦う人が自分の高校から出てくれたので、そういうところはチームとして本当に刺激をもらっています」
 
　世代別代表としてアジアの戦いを経験し、所属の鹿島でもACL制覇に大きく貢献した先輩の言葉が、後輩たちの背中を押したのは言うまでもないだろう。
 
　ただ、佐々木は刺激を受けるばかりでなく、「返したい」とも言う。
 
「勝利という部分では（安部の期待に）応えられましたが、後半はあまり良い内容ではありませんでした。明日も苦しい時間帯が来ると思いますが、またチーム全員で声を掛け合いながら頑張って、少しでも（安部に）良い刺激を与えられたらと思います」

　佐々木は「安部くんたちの時代は個人の技術が本当に高かった」と２つ上の世代を称賛しつつ、一方で「自分たちはそれに劣りますがチームワークがある。チームプレーで戦っていける」と胸を張る。その自信は３回戦でぶつかる難敵・岡山学芸館を下した時に、さらに深まることだろう。

取材・文●五十嵐創（サッカーダイジェストWeb編集部）