大会前には誰も見向きもしなかった集団が起こした一大ブーム。
7月4日はアメリカ合衆国にとって、「独立記念日」という最も特別な一日である。自由の国が自由を勝ち取った偉大な日に、国民はこの国に生を受けた意味を改めて自身に問い直すのだ。愛国心がいつも以上に刺激されるこの日に、代表チームが世界最強チームと対峙したのが94年アメリカ大会だった。
「サッカー不毛の地」と呼ばれ、大多数の国民がこのスポーツに無関心のアメリカ。大会直前になっても人々は野球やバスケットボール、アメリカンフットボールに熱狂し、自国で開催されたメキシコとの練習試合では、国境を越えてやって来た隣国のファンがスタンド大半を埋めるという有様だった……。
個性的な風貌のDFアレクシー・ララスは大会前、「どうせ誰も期待していないから……」と自嘲気味に語っていたものである。また、代表チームの実力にも疑問符が付けられ、開催国として初めて、第1ラウンドで敗退する不名誉な国となるのではないか? という声は非常に多かった。
しかし、いざ大会が始まると、このチームは国の代表としての誇りと開催国としての責任を胸に、各試合で驚くほどの粘りと好プレーを見せる。初戦で鮮やかな強敵スイスに引き分けると、2戦目では優勝候補のコロンビアを撃破。最終戦でルーマニアには敗れたものの、2位でグループリーグ突破を果たした。
こうして決勝トーナメント1回戦に進んだアメリカの前に立ちはだかったのは、サッカー王国のブラジル。グループリーグは十分に余力を残し、2勝1分けの首位で勝ち上がってきた。ロマーリオ、ベベットのFWコンビをはじめ、そうそうたるスターを揃えた優勝候補である。アメリカとの力の差は明白であり、ブラジル・メディアは開催国に敬意を表しながらも、この対決を大いに喜んでいた。
アメリカもグループリーグ突破を果たした時点で、十分に開催国としての義務は果たしていた。相手はブラジルである。大会前のアメリカなら、最初から勝負を捨てていたかもしれない。しかしこの頃、国内では大きな変化が起こっていた。代表チームがグループリーグで繰り広げた熱い戦いが、徐々に国民の関心を引き、ブラジル戦を迎える頃には、アメリカにサッカーブームが巻き起こっていたのである。
国内全土が注目するなか、灼熱のサンフランシスコ、スタンフォード・スタジアムで戦いの火蓋は切られた。主導権は当然、ブラジルが握る。アメリカは、SBのレオナルド、ジョルジーニョにたびたび両サイドを攻略され、ゴール前ではロマーリオとベベットの脅威に晒される。攻めようにも、中盤ではドゥンガやマウロ・シウバのぶ厚い壁をなかなか破ることができない。危険は間近に迫り、チャンスははるか遠い。しかし、アメリカは倒れなかった。強大な敵相手に、真剣に勝利を狙っていたからだ。
「サッカー不毛の地」と呼ばれ、大多数の国民がこのスポーツに無関心のアメリカ。大会直前になっても人々は野球やバスケットボール、アメリカンフットボールに熱狂し、自国で開催されたメキシコとの練習試合では、国境を越えてやって来た隣国のファンがスタンド大半を埋めるという有様だった……。
個性的な風貌のDFアレクシー・ララスは大会前、「どうせ誰も期待していないから……」と自嘲気味に語っていたものである。また、代表チームの実力にも疑問符が付けられ、開催国として初めて、第1ラウンドで敗退する不名誉な国となるのではないか? という声は非常に多かった。
しかし、いざ大会が始まると、このチームは国の代表としての誇りと開催国としての責任を胸に、各試合で驚くほどの粘りと好プレーを見せる。初戦で鮮やかな強敵スイスに引き分けると、2戦目では優勝候補のコロンビアを撃破。最終戦でルーマニアには敗れたものの、2位でグループリーグ突破を果たした。
こうして決勝トーナメント1回戦に進んだアメリカの前に立ちはだかったのは、サッカー王国のブラジル。グループリーグは十分に余力を残し、2勝1分けの首位で勝ち上がってきた。ロマーリオ、ベベットのFWコンビをはじめ、そうそうたるスターを揃えた優勝候補である。アメリカとの力の差は明白であり、ブラジル・メディアは開催国に敬意を表しながらも、この対決を大いに喜んでいた。
アメリカもグループリーグ突破を果たした時点で、十分に開催国としての義務は果たしていた。相手はブラジルである。大会前のアメリカなら、最初から勝負を捨てていたかもしれない。しかしこの頃、国内では大きな変化が起こっていた。代表チームがグループリーグで繰り広げた熱い戦いが、徐々に国民の関心を引き、ブラジル戦を迎える頃には、アメリカにサッカーブームが巻き起こっていたのである。
国内全土が注目するなか、灼熱のサンフランシスコ、スタンフォード・スタジアムで戦いの火蓋は切られた。主導権は当然、ブラジルが握る。アメリカは、SBのレオナルド、ジョルジーニョにたびたび両サイドを攻略され、ゴール前ではロマーリオとベベットの脅威に晒される。攻めようにも、中盤ではドゥンガやマウロ・シウバのぶ厚い壁をなかなか破ることができない。危険は間近に迫り、チャンスははるか遠い。しかし、アメリカは倒れなかった。強大な敵相手に、真剣に勝利を狙っていたからだ。