アンフィールドまで現地観戦に行くのは、サポーターズクラブに加入している私たちにとっても簡単なことではありません。仕事の混み具合、休みのタイミング、同僚や関係部署とのスケジュール調整など、いろいろなハードルをクリアする必要があります。やっとリバプール行きを決める事が出来ても、そこから飛行機やホテルの確保、列車の手配に追われます。
 
　みなさんご承知のとおり、2013-14シーズンのリバプールは快進撃を見せ、最終節までリーグの優勝争いに絡んでいました。24年振りの優勝に立ち会えるかも知れない、スティーブン・ジェラードがカップを掲げる姿を生で見られるかも知れない――。しかし世界中のサポーターが同じことを考えたのでしょう。リバプール市内のホテルは１か月前の段階でほぼ満室。一時は「この計画は無謀だったのかも……」と諦めかけていたほどです。どうにかこうにか宿の手配を済ませて向かったリバプール。街はただならない盛り上がりを見せていました。
 
　試合の前日には郊外にあるメルウッドの練習場を訪ねてみました。バスを降りると、周囲の塀の傍に車が停まっていて、トレーニングの様子を見ようとする沢山のサポーターが集まっています。私も地元のサポーターにお願いしてトラックの荷台に上げてもらい、遠目に練習の様子を見ることが出来ました。とはいえ、上背のない私の位置からでは誰が誰だか全く分かりません。現地サポーターの男性が、私の代わりに写真を撮影してくれました。
 
　その後、選手の出待ちをするために練習場の正門前に移動。こちらには地元の人達だけでなく、国籍、肌の色、言葉と様々なバックグラウンドを持つ人たちが集まっていました。夏にクラブが実施しているアジア・ツアーの影響か、アジア出身のサポーターが目立つ印象でした。
 
　普段の練習後は、選手が車を止めて手を振ったり、写真撮影やサインに応じてくれたりすることもあるそうです。でもこの日はなぜか判で押したように、どの選手もほぼ素通り（コロ・トゥーレだけは５０メートルほど先に車を止めて、サインに応じていたようですが）。最終節前日ということで神経質になっていたのか、それともサインはＮＧとお達しでも出ていたのでしょうか？　最後に出て来たブレンダン・ロジャース監督は、車を止めてサインや写真撮影に応じてくれました。たくさんのサポーターが群がる中、子ども優先でサインに応じていました。
 
　そしてむかえた試合当日の朝。舞い上がって注意散漫になっていたのでしょう。私はあろうことか、移動中の電車にカメラを忘れるという大失敗をしてしまいました。紆余曲折はあったのですが、そのカメラは午前中のうちに発見され、リバプールのターミナル駅に届けられました。電車に置き忘れたカメラが２時間で戻ってくるという奇跡は、リバプールの神様（ライバーバード？）が味方してくれたとしか思えない出来事でした。
 
　駅でカメラを受け取り、対応してくれた駅員さんに「I love Liverpool!!」と伝えて、いよいよ聖地アンフィールドに向かいます。赤いユニホームに身を包んだサポーターが街を歩いています。駅にほど近いバス停から臨時便のバスに乗り込み、アンフィールドに到着。降り立った私の視界に入ったのは、無数のサポーターの人だかり。ゲート近くのパブには人があふれかえっていて、チャントを歌う野太い声がパブの外にまで漏れ聞こえてきます。ゲート前ウォルトン・ブレック・ロードは、かつてないほどの人でごった返し、オフィシャル・ストアの入り口も長蛇の列が出来ています。選手の入りを見届けようと、有名な「You’ll Never Walk Alone」のフレーズが掲げられているシャンクリー・ゲートに回ってみると、こちらも沿道がサポーターでぎっちりと埋め尽くされています。聞こえてくるチャント、そして焚かれる赤い発煙筒･･････。
 
　スタジアムの中に入り、試合前の練習時間には行ける所までピッチに近づいて、写真を撮影。ジェラードの姿が心なしか俯き加減なのが気になりました。KOPスタンドに巨大なフラッグが現れ、客席も満杯に。興奮が頂点に達してキックオフの時を迎えました！生で聴くYou’ll Never Walk Aloneは、腹に響くような迫力！