【現地発】炸裂するショートカウンター!「クアトロ・ピボーテ」がアトレティコを救う

カテゴリ:ワールド

エル・パイス紙

2018年03月02日

シメオネ・サッカーのアイデンティティーを体現。

中盤に「クアトロ・ピボーテ」を採用したセビージャ戦は5-2で大勝。この試合でハットトリックをマークしたグリエーズマン(7)は次節のレガネス戦でも4ゴールを叩き出した。(C)Getty Images

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 フットボールとは、パラドックスな競技だ。

 リーガ・エスパニョーラ25節のセビージャ戦で、アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督は、中盤にサウール・ニゲス、ガビ、トーマス・パーテイ、コケを同時に起用。リーガでは17節のエスパニョール戦以来、約2か月ぶりに“クアトロ・ピボーテ”(4人のボランチ)を採用した。

 本来は守備的なシステムであり、その中盤の4人と、冬に再加入したFWのジエゴ・コスタを初めて組み合わせる試験的な意味合いもあっただろう。だがチームは、敵地サンチェス・ピスファンで難敵セビージャから大量5ゴールを奪取。今週末に行なわれる優勝争いへの生き残りをかけたバルセロナとの天王山に向けて、大きな弾みとなる1勝を飾った。

“クアトロ・ピボーテ”は、中盤の守備力とバランス、そしてアントワーヌ・グリエーズマンとD・コスタの得点力を重視したシステムだ。セビージャ戦では、組み立ての局面におけるパスの精度、緩急の使い分け、攻撃の継続性においては大いに物足りなさが残ったものの、シメオネ監督の狙い通り、ゴールに近い位置でボールを奪い、素早く攻撃に転じる得意のショートカウンターが見事に炸裂した。

 D・コスタがバネガからボールを奪ってそのまま流し込んだ1点目、コケの捨て身のプレーを起点にグリエーズマンが鮮やかなフィニッシュでネットを揺らした2点目、3点目のPKの起点となった一連のプレー、グリエーズマンのインターセプトからコケが決めた4点目と、いずれもボール奪取の数秒後に生まれたゴールだった。

 
 結果とともにシメオネ監督を満足させたのは、その内容だ。最大の収穫は、D・コスタとグリエーズマンの前線コンビが機能したことだろう。D・コスタが1月に加入して以来、ふたりが揃って際立った活躍を見せた試合はこれまで皆無に等しかった。

 D・コスタをめがけてロングボールを放り込む攻撃を多用すれば、グリエーズマンの存在感が希薄になり、逆にグリエーズマンをプレーに絡めようとすれば、D・コスタが前線で孤立するなど、両雄並び立たずの状況が続いていたが、このセビージャ戦ではそれが解消された。

 その点で重要な役割を担ったのがコケ。2013‐14シーズンのリーガ優勝の大きな原動力となったD・コスタとのコンビネーションにも、当時を彷彿とさせる冴えがあった。このコケが、パスコースとスペースを見つけやすくなったのは、前線に得点力のあるふたりが構えることで、相手守備陣の注意力が散漫になったことが背景にあり、まさに相互補完の関係を築く結果となった。

 D・コスタ復帰の恩恵を受けたのは、グリエーズマンも同様だ。セビージャ戦では相方の周辺をこれまで以上に自由に動き回りながら、スペースとタイミングを見極め、攻撃を牽引しつづけた。

 先日、ニコラス・ガイタンとヤニック・カラスコの大連一方(中国)への移籍が決まったように、シメオネはまたしても攻撃的MFをチーム戦術に融合させることに失敗。そんななか、ともすれば硬質になりがちなチームのアタックに変化をつけ、「崩し」のタスクを担えるのが、セカンドトップタイプでありながらフリーマンとしても振る舞えるグリエーズマンなのだ。

 この“クアトロ・ピボーテ”は、ある意味、シメオネ・サッカーのアイデンティティーを極限まで体現させたシステムと言えるだろう。みずから攻撃のイニシアチブを握らなければならない格下との試合では組み立ての面で不安を残すものの、強豪相手のシステムとしては大きな可能性を垣間見せた。

 週末のカンプ・ノウでも4人のボランチが中盤に高い壁を築き、D・コスタとグリエーズマンの2トップが高いレベルで機能すれば――。一度は消えかけたリーガの優勝争いに、ふたたび火が灯るかもしれない。

文●ラディスラオ・J・モニーノ(エル・パイス紙/アトレティコ番記者)
翻訳●下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
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