バルサカラーに無理に染まろうとはせずに。
ボルシア・ドルトムントには、バルセロナが長く注目してきた22歳の俊英がいた。ドイツ代表のMF、ユリアン・ヴァイグルだ。しかし、ここにきてバルサは、獲得候補リストからこの若きプレーメーカーの名前を外す決断を下している。
チームの中盤に必要な人材は、ヴァイグルが本職としているボランチではなく、より前目のポジションでプレーできるタイプのMFであることを認識したからだ。そう、まさにいまパウリーニョが果たしている役割である。
12月23日のクラシコでも、リオネル・メッシが中盤に下がってボールを受ける際、この大エースと入れ替わるようにして前線に飛び出し、シャドーストライカーの役割を担っていたのがパウリーニョだった。エルネスト・バルベルデ監督は試合後、「精力的な動きで中盤を支えながら、持ち味であるゴール前への飛び出しを随所に見せてくれた」と、その活躍に目を細めた。
バルサ入りが決定する前から、その実力に懐疑的な視線が送られていたブラジル代表MFのこの日のパフォーマンスについては、「彼は一流のフットボーラーであることを実証している」とクラブ関係者も高く評価する。
パウリーニョのいいところは、「あるがままのプレー」を心がけている点だろう。彼はバルサカラーに無理に染まろうとはしていない。
テクニックに繊細さを持ち合わせていないため、組み立てへの貢献はお世辞にも高いとは言えないが、その分、精力的に動き回って中盤を引き締め、機を見たゴール前への飛び出しで積極的にフィニッシュワークにも顔を出す。その結果が、17節までに6ゴールという数字にも表われている。
「プレミアでプレーしていた頃のパウリーニョは、まだ第一線で活躍する準備ができていなかった。でもその後、彼は成長を遂げ、いまバルサでキャリアのピークと言えるパフォーマンスを見せている」
現役時代、ペレの後継者のひとりに数えられたこともあるブラジル屈指の名将ムリシ・ラマーリョがこう褒め称えれば、「もともと安定感のあるプレーには定評がある」と、ペレのチームメイトとしてサントスで長く活躍した“ペペ”ことジョゼ・マシアは、高い実力の持ち主であることを断言する。