浦和にとってはホームで2-0が最低条件だったのだから、奇跡と呼ぶのは大げさだろう。川崎側から見れば、ほとんど自滅。車屋が無意味な行為で退場し、鬼木監督も采配によって選手を助けることができなかった。
【ACL準々決勝PHOTO】歓喜に沸いた埼スタ! 浦和の逆転劇をオリジナル写真で!!

……という見方は成り立つが、浦和にとって胸のすくような夜となったことは間違いない。
勝利の立役者は何人もいるが、あえて堀監督を挙げたい。
63分にはマウリシオに代えてズラタンを投入。前線の駒を増やし、高さを加えた。そして70分にCKからズラタンのヘッドが決まる。
75分には矢島に代えて駒井を投入。サイドにドリブラーを配置したことで、ラファエル・シルバがペナルティエリア内で働けるようになった。そして84分、駒井、柏木が右サイドを崩したところから、ラファエル・シルバのゴールが決まる。
勝負どころの2ゴールは、堀監督が描いた通りの形から生まれ、この流れから高木の目の覚めるような逆転弾が決まる。ネットが揺れた瞬間、私は正直、絶句してしまった。
今季、中盤戦から一気に失速した浦和にとって、この勝利はサポーターの信頼と期待をつなぎとめるものになった。
プロのサッカーチームにとって、いい試合とはなにか。
人によって答えは違うと思うが、私は観衆が「あれ見た?」と誰かに言いたくなるゲーム、プレーを見せることだと考えている。
これはサッカーやスポーツに限ったことではない。
料理だったら、「あれ食べた?」
本だったら、「あれ読んだ?」
映画だったら、「あれ見た?」
誰かに言いたくなるということは、お客さんが満足したということ。満足して、しかも誰かに自慢したくなるということ。この夜の埼スタの試合は、間違いなく「あれ見た?」と誰かに言いたくなるゲームだった。