賭けに勝ったハリル――サウジ戦の采配は選手起用もハイプレスも見事にハマった

カテゴリ:日本代表

原山裕平

2016年11月17日

“3人”を外したことよりも途中起用することのほうが難しい決断だったはず。

ハリルホジッチ監督は、本田、香川、岡崎という3人の主軸を先発から外す決断を下した。(C) SOCCER DIGEST

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 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督に対する評価が一変した、とまでは言わないが、指揮官への好感度が高まる一戦となったのは間違いないだろう。
 
 大迫勇也をはじめとした所属クラブで好調を維持する選手をスタメン起用し(清武弘嗣は出場機会を得られていないが)、試合勘を失っていた本田圭佑、香川真司、岡崎慎司をベンチに置いたのは、ごくまっとうな起用法ではあるものの、絶対軸だった選手たちを揃ってスタメンから外すのは、やはりひとつのギャンブルだったに違いない。
 
 より勇気が必要だったのは、その3人を途中から起用したこと。久保裕也の負傷により本田、清武の体力面を考慮しての香川、そして逃げ切り策として大迫から岡崎。それぞれの交代策には確かな理由が存在した一方で、リードした段階で、現状は決して万全ではないこの3人を段階的にピッチに送り込んだのは、ともすれば指揮官の進退問題に決定的なダメージを与える可能性があったからだ。
 
 とりわけ清武→香川の交代は、リスキーなものに映った。ハリルホジッチ監督は「ハイレベルなプレーをしてくれたが、クラブで出ていないので60分以上はもたない状態だった」とその交代理由を説明したが、攻撃の全権を握っていた清武を、“不調”のレッテルを貼られていた香川に代え、仮に同点、もしくは逆転されでもしていれば、間違いなくこの采配は、“世紀の愚策”と罵られていたはずだ。
 
 それでも指揮官は躊躇なく香川を送り込み、好意的に見ればこの10番が2点目に絡む働きを示したのだから、ハリルホジッチ監督の目利きは正しかったと言える。
 
 またこの采配にはもうひとつの狙いが潜んでいたように思う。「正直、今回は本当に誰が出るか分からなくて、監督も緊張感をみんなに持たせようとしていたのがすごく伝わってきた」と清武が言うように、たとえスタメンであったとしても、その立場は安泰ではないというメッセージである。
 
 この日のスタメンに、いつでも取って代わられる意識を植え付けつつ、重鎮たちのプライドも保った。この試合に限らず、今後の戦いを見据えたうえで、ハリルホジッチ監督が振るった采配は、実に理想的なものだったのだ。
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