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長谷川体制はグランパスに何を遺したのか。常に不運がつきまとった4年間で、もたらされた発展的な継続性を礎として積み上げていけば――

カテゴリ:Jリーグ

今井雄一朗

2025年11月15日

現場のトップ3が揃って交代するという大きな転換期

今季限りでの退任が発表された名古屋の長谷川監督。“最終章”は厳しい戦いを強いられたが、J1残留のミッションは果たした。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 鹿島と横浜FCの試合結果をもって、今季のJ1残留を決めたその翌日から、名古屋は新時代へのシフトチェンジを表明した。

 柏とのアウェーゲームの翌日11月9日に、まず山口素弘GMの退任が発表され、続く10日には古矢武士強化部長の契約満了と中村直志アカデミーダイレクターの強化部副部長兼任がリリース。中村強化部副部長は来季から強化部長に昇格することが決まっており、この時点から来季の編成等に携わることになっている。

 そして一日置いての12日、2022年から指揮を執る長谷川健太監督の契約満了が発表され、クラブは現場のトップ3が揃って交代するという大きな転換期を迎えることになった。

 長谷川体制の評価は難しい。クラブが過去獲得した5つのタイトルのうち、最新の1つは昨季のルヴァンカップ優勝であり、その実績は清水克洋社長も「大きな功績」と表現し、その点では山口GMは在任5年間で二度のルヴァンカップ制覇という実績を残した。

 だが、常にリーグ優勝とアジア挑戦を掲げるクラブの目標設定に対しては、この4年間で8位、6位、11位、17位(今季36節終了時点)と結果で応えられていない。今回の契約満了という判断には間違いなくその結果の部分の影響が大きく、それは清水社長の「リーグでの優勝であったり、ACL出場といった目線でチームの強化を図っていきたいなかで総合的に判断した」という言葉にも裏付けられる。Jリーグ史に残る名将を迎えて期待された栄冠への道は、一新された体制下において再スタートを切る。

――◆――◆――
 
 不運が常につきまとう名古屋での指揮官キャリアだった。すべてを運と片付けてはいけないが、それにしてもツイてない。就任初年度の22年はコロナの集団感染でキャンプが中断。一年を戦うチーム作りはいきなり頓挫し、練習が再開できたかと思ったらもう開幕日。開幕戦のメンバーはその11人の組み合わせとしてはシーズン初のことで、2-0で神戸に勝ったゲームはいま振り返っても奇跡的だったと言える。

 公式戦が始まってからチーム作りが本格化するような高難易度のシーズンでは、3バックへの移行という大博打にも打って出る勝負師ぶりも発揮し、30得点35失点という数字で勝点46を獲得。8位の座を勝ち取ったのは逆に言えば、長谷川監督の手腕なくしてあり得ない成績だった。

 2年目の23年は待望の点取り屋として獲得したキャスパー・ユンカーが期待通りの働きを見せ、永井謙佑とマテウス・カストロ、そしてこの年にブレイクスルーを果たした森下龍矢による高速カウンターでJ1リーグを席巻。しかしマテウスが夏にサウジアラビアに移籍したことで、その核を失ったチームは失速した。

 マテウスに代わる人材として森島司を獲得できたのは強化部のお手柄だったが、初の移籍に森島の実力は発揮しきらず。それでも前年から出場機会を増やして大きく成長を果たした藤井陽也の活躍もあり、チームはこの体制での最高順位である6位でシーズンをフィニッシュした。

 森下と藤井はシーズン後の日本代表にも招集され、前年22年のカタール・ワールドカップには相馬勇紀も送り込んでおり、かつて堂安律や久保建英を指導した選手育成の手腕も、この名伯楽はしっかり見せている。
 
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