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【パリ五輪を戦った大岩剛の回顧録|中編】なぜ欧州の強豪国とマッチメイクできたのか。悪条件でも高いレベルに揉まれる体験を求めた

カテゴリ:日本代表

松尾祐希

2024年10月01日

「我々が本気で戦えばなんとかなる」

欧州の強豪国との対戦にこだわった大岩監督。「言い方は悪いけど、無理矢理組んでいた」。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 A代表は海外組の数が増え、今ではメンバーの8割がヨーロッパでプレーしている。その流れは若手にも波及し、20歳前後で海を渡るケースも珍しくない。日本サッカー界の進化を象徴する事象だが、一方で若きタレントの海外挑戦によって五輪の位置付けが難しくなっている。

 インターナショナルマッチウィーク外に開催される五輪本大会やアジア最終予選は、代表の拘束力がない。そのため、ベストメンバーを揃えられず、クラブから色よい返事をもらっていても、土壇場で覆されるケースも頻繁に起こる。

 2021年の東京五輪は自国開催ということでクラブ側との折衝作業がスムーズにいったが、今回のパリ五輪では難航することが予想されていた。実際に最終予選から一部の海外組を招集できず、加えて本大会ではヨーロッパのクラブでプレーするオーバーエイジ組をチームに組み込めなかった。

 そうした状況に陥る可能性は大岩剛監督も想定済みだったからこそ、多くの選手をチームに呼んで経験を積ませてきた。クラブで出場機会を失っていたとしても継続して代表に招集。敵地で強豪国と戦うことでさらなる成長の導火線とし、本大会での戦いにつなげた。中編の今回は、約2年半の活動でなぜマッチメイクがうまくいったのかを紐解く。

――◆――◆――
 
 2022年3月上旬の千葉合宿からスタートした大岩ジャパン。同月下旬のドバイカップで初めて海外遠征を行ない、同年6月のU-23アジアカップを経て、秋からは欧州の強豪国に胸を借りた。

 9月にスイスとイタリア、11月にはスペインとポルトガル。23年3月にドイツとベルギー、6月にイングランドとオランダと対戦。欧州以外では10月にメキシコとアメリカと相まみえ、11月には日本でアルゼンチンと戦った。

 パリ五輪本大会直前の今年7月にはフランスと顔を合わせるなど、ヨーロッパで伝統と実力を兼ね備えた国のほとんどと戦う機会を得られた。過去の五輪世代を見ても、これほどのマッチメイクはあまり例がない。

「ヨーロッパの強豪国に比較的受け入れてもらえたし、うまい具合に良い経験にできた。ヨーロッパの国は自分たちの戦術確認とコンディション調整に重きを置いているなかで、我々が本気で戦えばなんとかなる。本当にあのレベルを味わえたのは感謝でしかない」

 どのような狙いを持ち、どんな経緯で実現したのだろうか。

 発足当初から大岩監督は骨のある相手とのマッチメイクをリクエストしていた。23年の夏まではほとんどの大陸で五輪チームが活動していなかった側面もあるが、U-21欧州選手権を控えているヨーロッパ勢と戦うスケジュールを組めたのは、いろんな折衝作業があったという。

「受けてもらえるとは思っていなかったけど、2つ先のインターナショナルマッチウィークぐらいまで候補を出してもらって、このタイミングであればやってもらえるかもしれないという話まではあった。とはいえ、お互いのスケジュールもある。なので、難しいのはインターナショナルマッチウィーク期間のどこで組めるかの調整が一番の問題だった」

 前向きな回答をもらっても、思惑が一致しなければ対戦は実現しない。日程面での攻防が毎回のように続いた。

「移動があるので日本としては中3日で対戦をしたい。でも、相手の希望は(日本代表の試合から逆算して)中2日。会場も違うし、国をまたいでの移動もある。毎回、『どうする、これいい?』という話になるけど、『強豪国と対戦することが目的だよね』と、中2日でやる遠征も多かった。本当にいつもせめぎ合い。

 日程がうまくハマったからこそ、アウェーでイタリアと、スペインでスイスとも対戦できた。試合会場を相手に合わせたのには、そういう理由があったんです。選手のコンディションも大事だけど、最大の目的は高いレベルのチームとできるだけ対戦すること。言い方は悪いけど、無理矢理組んでいた」

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