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痛恨すぎた山東戦での敗戦。ACLの悔しさはACLでしか晴らせない...川崎・鬼木達監督が臨む7度目のアジアの舞台【インタビュー2】

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2024年09月17日

「僕ら監督は最も姿勢を見せるべき存在」

大きな決意とともに臨んでいた今季リーグ開幕前のACL。その敗戦のショックは大きかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 ACL制覇は川崎の悲願である。だが、その挑戦は悔しき敗戦の連続でもあった。忘れられない今季始めの山東戦。まさかの敗戦を新たなフォーマットとなった“ACLエリート”へどうつなげるのか。鬼木達監督の想いに迫ったインタビューの第2弾だ。

――◆――◆――

「切り替えられないけど、切り替えます」

 その表情と言葉に胸が締め付けられる想いになった。

 今季のリーグ開幕前、昨季、無敗でグループステージを突破した川崎はACL2023-2024のラウンド16・山東戦でまたも大きな忘れ物をしてしまった。

 アウェー中国での第1戦は3-2で勝利。貴重なアドバンテージを手にして臨んだホームでの第2戦はまさかの結末が待っていた。

 開始8分にミスから失点すると前半を1-2で折り返す。それでも59分に同点に追いつき、トータルスコアで再び上回る。だが、73分、そして後半アディショナルタイムに被弾。痛恨の敗退を強いられたのだ。

 シーズンをまたがる大会であり、オフには新たな挑戦として山根視来、登里享平、山村和也らが移籍。少なくない選手の入れ替わりがあったなかで、キャンプでは山東戦に照準を合わせて駆け足でチームを作ってきたが、大事な場面で綻びが生じてしまった。

 昨季、天皇杯を制したとはいえ、覇権奪回を目指したなかで、リーグ戦は鬼木体制で最も成績が振るわない8位。指揮官の去就が注目される時期も少なくなかった。本人も考えるところがあったに違いない。それでも天皇杯決勝の約2週間前、11月29日に鬼木監督は続投を発表。覚悟を決めた背景にはACLへの想いがあったと山東戦の前に振り返ってくれていた。

「昨季は納得のいく成績ではなかったですが、基本的に自分からチームを投げ出すとか、そういうことをする気はなかったです。そう思ったら勝負に対する運と言いますか分かれ目のところを引き寄せられなくなると強く考えていたので。このチーム、このクラブをなんとかするんだという想いでした。

 ただ、自分のなかで成績とか関係なく、自分がどういう形でこのクラブに貢献できるのか、自分が必要なのか、必要とされているのかは考えさせられる時期でした。

 それでも、当時まだタイトル(天皇杯)が残っていましたし、自分自身もチームもまだ成長できると感じていました。もうひとつはACLのグループステージを良い形で戦えていた時期でもありましたし、まだ手にしていないACLは中途半端な形で獲ることは絶対にできない。だからこそ自分が決断しないと、そこへのパワーが出しづらいと考えました。決断してパワーに変えていく。その想いはありましたね。

 僕ら監督は最も姿勢を見せるべき存在で、その姿勢がチームに波及する。僕が緩くなればチームも緩くなるし、僕が勝ちたいと思えば、みんなも勝利への想いをより強くしてくれる。実際、選手たちがどう感じてくれているのか分かりませんよ。でもそう信じて指導している。そういう意味では、自分の決断を自分も信じますが、僕は周りの人たちを信じて生きてきている。そこはブレちゃいけないと感じていました。

 そこは捉え方であって、僕はそういうことをできる立場でもありますし、それをすることで自分も変わっていけたり、人を自分が変えようとしなくても、自分の姿を見て変わっていってくれたりする。勝利への道筋ひとつとっても、姿勢の部分って強制するって言ったら変ですが、自分が思っているようにやってもらうことってなかなか難しいことじゃないですか。だからその人の頭を変えたかったら、自分が変わらないとダメだな、示さないとダメだな、という想いがやっぱり強い。自分が示し続けたら変わってくれるだろうという信じる気持ちが僕は強いのかもしれないです。

 それにやることをやってダメだったらしょうがないと思えるんですよ。試合でも準備し尽くして負けたら悔しいですが、切り替えられる。ずっとその繰り返しです。だからスタッフらに本当に助けてもらっていますし、自分ひとりでやれることに限界はあります。ひとりで抱えていたら難しいこともみんなでだったらやっていける。だから基本的に僕は何も変わらない。そのなかでサッカー面でもっと面白いことができないか、日々考えています」
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 ACLを本気で獲りに行くんだという意志を背中で見せる。次の大会からはフォーマットが変わることも分かっていた。だからこそ、2024年5月の決勝に向けてすべてを懸けて臨んでいた。アジアで結果を残せばクラブとして新たなフェーズに行けると信じていた。何より川崎の素晴らしきサポーターたちを、アジアへ、世界へ発信したいという想いが強かった。

「フロンターレというこんなに素晴らしクラブが日本にあるんだよって伝えたい。そして選手にクラブワールドカップを経験させてあげたい」

 監督としての願いは明確だった。それでも届かなった。

 山東戦の直後にはリーグ開幕戦が迫っていた。それでもスタジアムの片隅で鬼木監督がもらした「切り替えられないけど、切り替えます」という言葉。そのショックは計り知れなかった。

 何が足りなかったのか。何がいけなかったのか。

 その答え探しは今も続いているのだろう。やはりACLの屈辱はACLでしか晴らすことはできないのである。
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