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【今日の誕生日】5月20日/42歳で成し遂げた偉大なる記録樹立――ミラ(元カメルーン代表)

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年05月20日

38歳で代表復帰を果たし、そこから夢のような物語が始まる。

「半分引退した状態だったが、コンディション調整は絶対に怠らなかった」(ミラ)ことにより、42歳になっても世界を驚かせることができた。 (C) Getty Images

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日本が失意のどん底にあるなか、大記録を樹立したモンドラゴンの周囲はお祝いムードに。93年に代表初キャップを刻み、14年大会後にユニホームを脱いだ彼は、クラブレベルでは世界中の12のクラブを渡り歩いた。 (C) Getty Images

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◇ロジェ・ミラ:1952年5月20日生まれ カメルーン・ヤウンデ出身
 
 日本にとって苦い記憶しか残らなかった2年前のブラジル・ワールドカップ。なかでも必勝を期して臨みながらも1-4で完敗を喫したコロンビア戦は、思い出したくもない一戦である。
 
 しかし、この試合はサッカーの歴史において、永遠に語り継がれるものとなった。85分、勝利を確信したコロンビアが送り込んだGKファリド・モンドラゴンが、W杯における最年長出場記録を更新したからだ。彼はこの時、43歳だった。
 
 長くコロンビアのゴールマウスを守り続け、98年フランス大会では全試合でゴールマウスに立ったことが知られているモンドラゴンだが、彼はその4年前のアメリカ大会――コロンビアが優勝候補に挙げられていた大会だ――でもメンバー入りを果たしている。
 
 コロンビアがこれ以上ない悪夢を味わったこの94年大会で、大記録を2つ達成した選手がいる。モンドラゴンの前の最年長出場記録保持者であるロジェ・ミラだ。
 
 カメルーンの英雄はこの時、42歳で世界の大舞台に立っただけでなく、グループリーグのロシア戦でゴールまで挙げている。この最年長得点記録の方は、いまだ破られていない。
 
 今日で63歳となったミラの人生ほど、ドラマチックなものはない。13歳で母国のクラブとプロ契約を交わし、78年にフランスに渡ってヴァランシエンヌ、モナコ、バスティア、サンテティエンヌ、モンペリエとクラブを渡り歩いた。
 
 しかし、18年にもおよぶフランスでの生活において、彼が脚光を浴びることは少なく、自身も「アフリカから来た自分を利用しようとする輩とのトラブルが多く、プレーに集中するのも難しかった」と当時を振り返っている。
 
 一方、代表レベルでは、78年に初キャップを刻み、82年に最初のW杯に出場。カメルーンは初出場ながら、イタリア、ポーランド、ペルーといった強豪国と引き分け、後に優勝を果たすイタリアにわずかな得失点差で下回って2次リーグ進出を逃したが、高い評価を得た。
 
 ミラ自身も好プレーを披露し、これで国民から愛される存在となった。このことが、8年後の大ブレークに繋がっていく。
 
 90年イタリア大会前、ミラはすでに38歳となっていた。代表は引退しており、サッカー連盟に対しても「招集しないよう要請していた」(ミラ)が、他ならぬ国民が声高にミラの代表復帰を訴え始め、ついには大統領までが動く事態となった。
 
 国民の願いを受け入れ、カメルーンのユニホームを身に纏ったミラは、チームメイトの嫉妬とソ連人代表監督(後にサンフレッチェ広島の監督も務めるヴァレリー・ニポムニシ)の冷ややかな視線を浴びながらも、ピッチに立てば抜群の身体能力とテクニックを披露した。
 
 世界を驚かせたアルゼンチンとの開幕戦(1-0で勝利)では残り10分で出場し、続くルーマニア戦では瞬間的な速さ、見事な跳躍とフィジカルの強さ、そしてフィニッシュの正確さを見せつけ、チームを勝利に導く2ゴールを決めた。
 
 そして決勝トーナメントへ。コロンビア戦では、鮮やかなドリブルで先制点を挙げ、さらに追加点もゲット。それは、あの超攻撃的GKレネ・イギータから巧みにボールをかっさらって無人のゴールに流し込むという、今でも語り継がれる伝説のゴールである。
 
 アフリカ勢として初めて進んだ準々決勝でもイングランドを追い詰めたカメルーンだが、延長戦の末に快進撃は止まった。ミラはこの試合でゴールを挙げられなかったものの、敗戦後の表情は満足感と誇りに満ちていた。
 
「“ロジェ爺さん”はまだ死んでいなかったということだ(笑)」と当時を振り返るミラだが、さらにその4年後、42歳の時、再び大統領からの要請を受けて3度目のW杯出場を果たした。
 
 さすがに活躍は無理だろうといわれていたが、前述の通り、ロシア戦でゴール。チームが1分け2敗・3得点11失点でグループリーグ最下位の終わるなかで、やはり全ての話題をミラがさらうかたちとなった。
 
 引退後も国の英雄として、強い影響力を誇る彼は、特別大使などを務め、様々なイベントに顔を出している。ちなみに、かつてJリーグ参戦も噂された時期があった。
 
 冒頭に紹介した通り、W杯最年長出場記録はモンドラゴンに破られたものの、フィールドプレーヤーとしては今なお、ミラは記録保持者である。
 
 そもそも、40代でW杯出場を果たしたのが、他にイタリアのディノ・ゾフ(82年大会で40歳)、北アイルランドのパット・ジェニングス(86年大会で41歳)、イングランドのピーター・シルトン(90年大会で40歳)、チュニジアのアリ・ブムニエル(06年大会で40歳)だけである。
 
 これらの選手は全てGKであり、このことからも、いかにミラが異色かつ偉大な存在であるかを、改めて思い知らされるものである。

82年大会、40歳での世界制覇。ゾフはキャプテンとして混乱状態にあったイタリアをまとめ、ゴールマウス上で数々のスーパーセーブを披露した。 (C) Getty Images

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82年から3大会連続でW杯の舞台に立ったシルトン。86年にはディエゴ・マラドーナの「神の手」「5人抜き」の伝説創成を許したが、90年大会ではチームの4位入賞に貢献した。 (C) Getty Images

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