切断障がい者が松葉杖でプレーする「アンプティサッカー」。全国大会で見えた現状と未来

カテゴリ:特集

森本茂樹

2016年05月17日

競技人口は約80名。現在全国に8チームが活動中

日本にアンプティサッカーを広げるきっかけとなったFCアウボラーダのエンヒッキ・松茂良・ジアス選手(右)。新たに参加してきた選手も増えた中で、チーム力の底上げに貢献している。 写真:森本茂樹

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5月14・15日の2日間にわたり、大阪府大阪市の鶴見緑地球技場で「第三回レオピン杯Copa Amputee」が開催された。この4月に7つの障がい者サッカー団体が集い、「日本障がい者サッカー連盟」が発足。障がい者サッカーに注目が集まる中、その1つであるアンプティサッカーの全国大会を取材した。


 アンプティサッカーは、30年以上前、アメリカの負傷兵がリハビリテーションとして松葉杖をついてプレーしたのが起源と言われる。

 日本には2010年に導入され、日本代表は2010年、2012年、2014年と3大会連続でアンプティサッカーワールドカップに出場。2014年メキシコ大会では、決勝トーナメント進出も果たしている。この2016年はワールドカップイヤーだったが、事情により見送りとなってしまい、次回大会の時期や場所についてはこれからの協議となっている。

 アンプティサッカーは、フィールドプレイヤー6名とゴールキーパーが、25分ハーフ、40m×60mのコートで戦う。フィールドプレイヤーは主に片足の切断者で、日常生活で使われる通常の松葉杖「クラッチ」をついてプレーする。

 GKは主に片腕を切断しているが、残っている腕の長さによりセービングがしやすくなってしまうことから、使用しない腕はユニフォームの中に入れ、片腕だけでプレーする。障がいの度合いは選手ごとに異なるが、できるだけ同条件でプレーして勝敗を競うのがアンプティサッカーである。

 アンプティサッカーのチームは現在全国に8チームあり、競技人口は約80名。第三回レオピン杯には63名がエントリーし、北海道と千葉、そして新チームの静岡が広島と合同チームとなり、6チームで争った。大会初日は、2組に分かれて戦う予選リーグ。2日目は上位2チームによる準決勝からスタート。順位決定戦も含め、2日間で合計11試合が行なわれた。

大会初日には新人選手13名の紹介が行われた。 写真:森本茂樹

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初の女性選手として注目を集めた九州の秋田真弓選手は、「再びサッカーができて、またチームでサッカーができることが楽しく、嬉しく思います」と話した。 写真:森本茂樹

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 大会初日、新選手紹介ということで、各チームから合計13名が紹介された。1年前のレオピン杯では、まだアンプティサッカーを知らなかったり、ボランティアとして関わっていた方たちである。切断障がい者に限られる比較的新しいスポーツということもあり、競技者数が飛躍的に伸びていることはないが、2010年のスタート時からすると、大きく変わったという。

 日本アンプティサッカー協会で普及・教育事業を担当する阿部眞一さんは、「2011年に初めて開催した日本選手権はたった3チーム。ブラジル代表としてアンプティサッカーワールドカップにも出場したことのあるエンヒッキ・松茂良・ジアス選手だけが抜きん出ていた感じでしたね。日本選手権を5回、レオピン杯を3回と大会を重ね、競技としてもスピードやテクニックに優れた、障がい者スポーツと思わないぐらいのレベルにまでなったと思っています。今回は初の女性選手の参加という喜ばしいニュースがありますが、各チームにまだまだ選手が足りず、選手層が薄いなどの課題はまだまだあります」と教えてくれた。
 
 実際、今大会でもGKがいないチームに、複数GKがいるチームからレンタルが行なわれたり、千葉と北海道、広島と静岡が合同チームになったり、初日には参加できなくなった選手がいたため、1名少ないままで戦ったチームがあったりと、競技性を志向した大会ではあるものの、整備されていない部分はいくつか見受けられる。

 阿部さんは、今後のアンプティサッカーについてこう説明した。「小中学校などでの講演や体験会を通じて、これからもアンプティサッカーの認知度向上を目指していきます。また、事故などで切断障がいになり、塞ぎ込んでいる人たちに、アンプティサッカーを社会に出るためのきっかけにしてもらいたいと思っています」
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