【回顧録】“英雄”シメオネのアトレティコでの功績を振り返る――1995-96シーズン

カテゴリ:ワールド

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年05月02日

怪我が癒えず、低調なパフォーマンスに終わった加入1年目。

アルゼンチン代表ではマラドーナ不在時に背番号10を付けるなど、若い頃から高く評価されていたシメオネ。アトレティコとの関係は94-95シーズンに始まった。 (C) Getty Images

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 長かったシーズンもいよいよ佳境を迎え、欧州サッカーシーンは、熱を帯びてきている。
 
 なかでも、熾烈を極めているのがリーガ・エスパニョーラだ。バルセロナ(1位)、アトレティコ・マドリー(2位)、レアル・マドリー(3位)が勝点差1(36節終了時点)のなかで三つ巴の争いを繰り広げ、タイトルレースがより激しさを増している。
 
 バルセロナ、マドリーの2強の間に割って入り、優勝戦線を加熱させているアトレティコの原動力となっているのが、指揮官のディエゴ・シメオネのマネジメント力ということは言うまでもない。
 
 熱意溢れる指揮で、クラブを高みへと導いているアルゼンチン生まれの熱血漢とアトレティコの関わりは深く、実に興味深い。その両者の歴史を回顧していく――。
 
――◆――◆――
 
 1987年にアルゼンチンの古豪ヴェレス・サルスフィエルドでデビューしたシメオネは、90年にイタリアのピサへ移籍し、ヨーロッパへの挑戦を開始した。
 
 しかし、チームは加入1年目でセリエBに降格。そのこともあって経営不振に陥っていたピサはシメオネの売却を決断する。これにより彼は、スペインのセビージャへプレーの場を移すこととなった。
 
 当時のセビージャは、アルゼンチン人の名将カルロス・ビラルドが指揮官を務め、FWにはあのディエゴ・マラドーナとクロアチア代表FWのダボール・シュケルが在籍。名立たるスターが揃い、世界から注目を集めるチームだった。
 
 そのなかで中盤に就いたシメオネの、粘り強く、ファウルすら厭わない狡猾なプレースタイルは、日々磨かれていく。
 
 94年1月16日のバルサ戦では、当時、バルサのエースだったロマーリオのマークに付き、稀代のストライカーを封殺。そのマークの厳しさは、不満を溜めたロマーリオに殴られるという事件が起きるほどだった。
 
 その後、93-94シーズンにはセビージャの新指揮官となったルイス・アラゴネスの下で戦術眼を学んだ。そしてシーズン後にはアルゼンチン代表として、自身初のワールドカップにも出場した。
 
 88年には代表選手としてのキャリアをスタートさせていたシメオネは、すでに91、93年のコパ・アメリカ連覇、92年のコンフェデレーションズ・カップ優勝などの実績を残しており、94年夏のアメリカでも当然、レギュラーとして戦った。
 
 そしてこの大会の後、アトレティコとの邂逅の時が訪れる。長く続く両者の関係がここから始まった。シメオネ、24歳の時である。
 
 とはいえ、その1年目は最悪だった。彼自身は怪我が癒えず、公式戦の出場はわずか3試合。そして、チームも残留争いに巻き込まれるなど、不本意なシーズンを送ったのである。
 
 しかし、そんなシメオネ、アトレティコにとって、転機は意外なほど早く訪れた。
 
 
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