【今日の誕生日】4月8日/ポーランド黄金時代に輝いたW杯得点王――ラトー

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年04月08日

快足を活かしたウイングでありながら、抜群の得点力を誇った。

引退後は、国内外のクラブの監督を歴任し、さらに政界にも進出。そして2008年から12年まで、ポーランド・サッカー連盟の会長を務めた(現会長はボニエク)。 (C) SOCCER DIGEST

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今夏、レバンドフスキは、EUROという大舞台で偉大な先達と同じ足跡を辿ることができるか。 (C) Getty Images

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◇グジェゴシ・ラトー:1950年4月8日生まれ ポーランド・マルボルク出身
 
 今夏、フランスで行なわれるEURO本大会。どの国が優勝するかは最大の興味だが、同時にどんな選手が活躍するかも、ビッグイベントの大きな楽しみである。
 
 なかでも、大会得点王の座を誰が手にするのかには、いつの大会でも大きな注目が集まるものだ。
 
 そして今回、その候補としてロベルト・レバンドフスキの必ず名前が挙がっている。バイエルンで得点を量産し、現時点で得点ランクのトップに立つポーランド代表FWだ。
 
 3位入賞を果たした1982年スペイン・ワールドカップ以降、A代表としてはメジャー大会でパッとした成績を挙げられていないどころか、本大会出場もままならない状態が続いている古豪ポーランドだが、この世界屈指の点取り屋こそが現状打破の大きな希望となる。
 
 もし、レバンドフスキが今夏、フランスで得点王の座を手にすることができれば、それは92年バルセロナ・オリンピックでのアンドジェイ・ユースコビアク以来となるポーランド代表史上の大偉業だ。
 
 そしてA代表では、74年、西ドイツ(当時)W杯で強豪国相手にゴールを積み重ねたグジェゴシ・ラトー以来となる。
 
 今日で66歳となったラトーは現役時代、快足と巧みなボール扱いをウリとするウインガーであり、主に右サイドでチャンスを生み出しながら、同時に自身がフィニッシュまで持ち込んで試合を決めた。
 
 66年にスタル・ミエレツでデビューし、80年までの在籍期間で2度のリーグ優勝に貢献。そして自身は2度の得点王に輝いた。
 
 当時、ポーランドでは30歳まで国外移籍ができないという規則があり、ラトーがベルギーのロケレンに移籍できたのは80年になってから。ここで2シーズンを過ごした後、メキシコに渡ってアトランテで84年までプレーし、最後はカナダのアマチュアリーグに91年まで在籍した。
 
 代表チームには71年から招集され、72年ミュンヘン五輪で金メダルを獲得。国際舞台では何の実績もなかったポーランドの存在を、世界に知らしめるのに大貢献を果たした。
 
 そして74年W杯。予選でイングランドを蹴落として本大会に進んできたものの、前評判は決して高くなかったポーランドだが、初戦で強豪アルゼンチンを3-2で下すと、一気に波に乗った。この重要な一戦でラトーは、先制点を含む2ゴールを挙げている。
 
 その後、7-0で圧勝したハイチ戦でも、彼は2得点。なお、ポーランドはイタリアにも2-1で勝利してグループリーグを首位突破し、この大会で旋風を巻き起こすオランダとともに、新勢力として一躍注目を浴びることとなった。
 
 ラトーの勢いは2次リーグでも衰えることなく、スウェーデン戦、ユーゴスラビア戦でともに頭で1点を挙げて勝利に貢献。決勝進出を懸けた西ドイツ戦では無得点に終わり、試合も0-1で落としたものの、気を取り直して前回王者ブラジルとの3位決定戦に臨んだ。
 
 ここで彼は、持ち味を十二分に発揮。76分、自陣でボールを得ると、快足を活かしてDFをあっさりとかわし、長距離ドリブルからゴールを決めたのである。通算7得点目。これでポーランドの3位入賞、そして自身の得点王を確定させた。
 
 その後、ラトーは76年のモントリオール五輪でランキング3位となる3得点で銀メダル獲得に貢献。78年アルゼンチンW杯では、チュニジア戦で決勝ゴール、2次リーグのブラジル戦で1ゴールを挙げた。
 
 そして彼にとって最後のメジャー大会となった82年W杯。すでにキャリアのピークは過ぎており、得点はペルー戦の1点に止まったものの、全7試合に出場して攻守に奮闘し、ポーランドを2大会ぶりの3位入賞に導いた。
 
 ちなみにラトー以外で、メジャー大会で得点王となったポーランド人は、前述のユースコビアク(7得点)の他、72年五輪のカジミエシュ・デイナ(9得点)、76年五輪のアンジェイ・シャルマッフ(6得点)がいる。
 
 これらの偉業達成の背景には、チーム自体が上位進出を果たしたという共通点がある(当然と言えば当然だが)。ユースコビアクが活躍した92年、ポーランドはカンプ・ノウで地元スペインと決勝を戦い、歴史に残る激戦を演じている(2-3で敗北)。
 
 ちなみに3位となった82年W杯でのチーム最高得点者は、4得点のズビグニエフ・ボニエク。ブラジルのジーコと並んで、ランキング3位だった。
 
 この過去の例に照らし合わせれば、今夏、もしレバンドフスキが得点王、もしくはランキング上位につけることがあれば、それはすなわち、フランスでのポーランドの大躍進に繋がると言えよう。

74年W杯のブラジル戦。自陣右サイドから快足ドリブルで80メートル近くを独走し、GKの動きを冷静に見て、ゴール左隅に流し込んだ。 (C) Getty Images

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92年五輪のユースコビアク(左)。大会後にポルトガルのスポルティングに移籍し、その後はドイツのボルシアMGやヴォルフスブルク、アメリカのメトロスターズ(現ニューヨーク・レッドブルズ)などのクラブを渡り歩いた。 (C) SOCCER DIGEST

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