【W杯 今日は何の日?】7月6日「魅惑のポーランド、栄華の始まり」

カテゴリ:国際大会

サッカーダイジェストWeb編集部

2014年07月06日

五輪金メダル獲得から始まった東欧の新興勢力の輝かしい日々。

写真は82年大会での表彰式。後方でスタッフと喜ぶのがラトー。3大会で10得点を記録し、点取り屋、ウイング、ゲームメーカーと引き出しの多い選手だった。引退後は母国で国会議員も務めた。 (C) SOCCER DIGEST

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 サッカーの世界では、ある時期にひとつの勢力が生まれ、一大会で脚光を浴びただけで消える場合もあれば、数大会にわたって好成績を残すことがある。今大会でいえば、コスタリカやコロンビアはそういった部類に入るのかもしれない。
 
 東欧のポーランドも70年代、突如として世界のサッカーシーンに躍り出てきたチームだ。ワールドカップでは38年フランス大会に出場しただけで(1回戦敗退)、国際舞台でさしたる結果も残していなかったこの国が、上昇のきっかけを掴んだのは1970年12月。代表監督にカジミエシュ・ゴルスキを迎えた時だった。
 
 新体制のポーランドが最初に目標としたのが、1972年にドイツ・ミュンヘンで開催されるオリンピック。当時の規定ではプロ選手の参加が認められていなかったため、アマチュア選手でチームを組まなければならない西側諸国に対し、プロスポーツ選手という職業が存在しないゆえにA代表と同じメンバーを組むことができる東欧は圧倒的有利だった。
 
 そしてこの大会で、ポーランドは初めて金メダルを獲得する。それまでの最高成績は、36年ベルリン五輪での4位だった。決勝で東ドイツを破ったチームには、イェルジ・ゴルゴン、カジミエシュ・デイナ、グジェゴシ・ラトーといったその後の快進撃を支える、攻守の中心選手たちの多くが名を連ねていた。
 
 ポーランドの上り調子をさらに印象付けたのは、73年10月3日。敵地ウェンブリーでのイングランド戦を1-1で引き分け、サッカーの母国を蹴落として翌年のワールドカップ本大会に駒を進めた時だ。GKヤン・トマシェフスキーの好守連発は、今でもサッカー界の伝説となっている。
 
 とはいえ、当時の五輪金メダルとは、サッカー界にとっては決してステータスの高いものではなく、74年西ドイツ・ワールドカップの開幕時点で、ポーランドにはそう大きな期待はかけられていなかった。1次リーグの初戦も、当然ながらアルゼンチンが勝つものと誰もが思っていた。
 
 しかしポーランドはこれを3-2で制すると、持ち前のスピードと高度な組織力でハイチを7-0、そして前回準優勝のイタリアをも2-1で破り、首位通過を果たす。世界を驚かせるほどのハイレベルなプレーを見せたポーランドだが、なかでもラトーとアンジェイ・シャルマッフの得点力は凄まじい限りだった。
 
 2次リーグを迎える頃には、他の強豪と肩を並べるほどの評価を得ていたポーランドは、スウェーデンを1-0、ユーゴスラビアを2-1と連破すると、最終戦で決勝進出を賭けて地元・西ドイツと対戦。試合前、フランクフルトのスタジアムは土砂降りに見舞われ、ポーランド側は試合の延期を求めたが、認められなかった。流れるようなパスワークが武器のポーランドは大きなハンデを背負い、結果的に0-1の敗北を喫し、3位決定戦に回ることとなった。
 
 そして7月5日、前回王者のブラジルをラトーの長距離ドリブルによるゴールで下し、3位入賞を果たしたポーランド。ラトーは通算7得点で大会得点王を獲得した。ブラジルの長かった黄金時代の終焉とともに、東欧の新興勢力が新たな栄華の時を迎えたことを、世界中の人々は感じた。
 
 その後、ポーランドは2年後のモントリオール五輪でも銀メダルを獲得し、ズビグニエフ・ボニエクというポーランド史上最高のスターを新たに加えた78年アルゼンチン・ワールドカップでは2次リーグ進出、そして82年スペイン大会では再び3位と、世界の強豪としての輝かしい日々を過ごしたのである。
 
 92年のバルセロナ五輪で決勝進出を果たして以降、国際舞台では目立った活躍のないポーランド。2012年にヨーロッパ選手権をウクライナとともに自国で開催するも、2分け1敗の成績(グループリーグ敗退)に終わっている。再びかつてのような華やかな時代を迎える予感は……、今のところは全くない。
 
 
◆7月6日に行なわれた過去のW杯の試合
 
1974年西ドイツ大会
「3位決定戦」
ポーランド 1-0 ブラジル
 
2010年南アフリカ大会
「準決勝」
ウルグアイ 2-3 オランダ
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