「バスクの土壌で育っている」
スペイン国王杯、アスレティック・ビルバオがFCバルセロナ、アトレティコ・マドリーを撃破し、決勝に進出している。
「純血主義」
アスレティックは「バスク人のみ」のチーム編成で100年間以上を戦い抜き、たった一度も2部に降格したことがない。スペインでは他にレアル・マドリーとバルサがラ・リーガ創設以来、1部リーグで戦ってきたが、彼らは有力な外国人選手に支えられてきたビッグクラブだ。
アスレティックが、どれだけ異色のクラブか――。
バスク人は主に、スペインの北に位置するバスク自治州(ビスカヤ、ギプスコア、アラバの3県)とナバーラ州、フランスのピレネー・アトランティック県の一部で暮らしている。その人口は300万人程度。ただ、南米などへの移民も多く、その子孫を含めると1500万人、あるいはそれよりも多いと言えるかもしれない。
バスク人はとにかく特異である。血液型は遺伝型で、60%がRHマイナス。風貌からして、他地域のスペイン人とは一線を画す。体躯は頑健で大柄だが、顔立ちにラテン人特有のくどさがなく、美男美女が多い。そして彼らの話すバスク語は言語学的に欧州ではまったく異質で、「絶滅した古代言語」とも言われる。
「悪魔がバスク人の娘をたぶらかそうとしたが、7年かかっても言葉を覚えられずにやめた」
そんな逸話も伝わるほど、欧州では「あり得ない」。かつてローマ帝国にも、西ゴート王国にも、イスラム帝国にも侵略を許さなかったことで、独自の言語や文化を守れたとも言われるが…。
「アスレティックは奇跡のクラブ。きっと神様が作ったのさ」
そのバスクの象徴の一つであるアスレティックは、現地でそう言われる。
【動画】カディスの意表を突くCK!久保の巧みなプレアシスト
「純血主義」
アスレティックは「バスク人のみ」のチーム編成で100年間以上を戦い抜き、たった一度も2部に降格したことがない。スペインでは他にレアル・マドリーとバルサがラ・リーガ創設以来、1部リーグで戦ってきたが、彼らは有力な外国人選手に支えられてきたビッグクラブだ。
アスレティックが、どれだけ異色のクラブか――。
バスク人は主に、スペインの北に位置するバスク自治州(ビスカヤ、ギプスコア、アラバの3県)とナバーラ州、フランスのピレネー・アトランティック県の一部で暮らしている。その人口は300万人程度。ただ、南米などへの移民も多く、その子孫を含めると1500万人、あるいはそれよりも多いと言えるかもしれない。
バスク人はとにかく特異である。血液型は遺伝型で、60%がRHマイナス。風貌からして、他地域のスペイン人とは一線を画す。体躯は頑健で大柄だが、顔立ちにラテン人特有のくどさがなく、美男美女が多い。そして彼らの話すバスク語は言語学的に欧州ではまったく異質で、「絶滅した古代言語」とも言われる。
「悪魔がバスク人の娘をたぶらかそうとしたが、7年かかっても言葉を覚えられずにやめた」
そんな逸話も伝わるほど、欧州では「あり得ない」。かつてローマ帝国にも、西ゴート王国にも、イスラム帝国にも侵略を許さなかったことで、独自の言語や文化を守れたとも言われるが…。
「アスレティックは奇跡のクラブ。きっと神様が作ったのさ」
そのバスクの象徴の一つであるアスレティックは、現地でそう言われる。
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バスク人純血主義は、一つはその血にある。もう一つの条件は「バスクで生まれ育ったか」。これは文書化されたポリシーではなく、だからグレーゾーンはあって、拡大解釈もある。
現在、アスレティックの攻撃をけん引するウィリアムズ兄弟も、ガーナ人の父とリベリア人の母を持つ。兄のイニャキはガーナ代表を選び、弟のニコはスペイン代表でプレーしている。彼らの前には、ジョナス・ラマーリョがアスレティック初の黒人選手としてプレーしていた。
一つ言えるのは、「アスレティックの選手はバスクの土壌で育っている」ということだろう。その人材を吸い上げることで、トップチームは驚くべき成果を上げている。ラ・リーガ優勝は過去8回、今回決勝に進出した国王杯の優勝回数は過去23回で、バルサに次ぐ。
安っぽいボーダーレスではなく、地域の誇りで戦う。
そこに、アスレティックの誇るべき強さの秘密があるのだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
【記事】「普通にありえない」「神経疑う」悪質ファウル連発で久保建英を激怒させたカディス、公式Xがまさかの“煽り投稿”で大炎上!「まともなチームじゃない」
現在、アスレティックの攻撃をけん引するウィリアムズ兄弟も、ガーナ人の父とリベリア人の母を持つ。兄のイニャキはガーナ代表を選び、弟のニコはスペイン代表でプレーしている。彼らの前には、ジョナス・ラマーリョがアスレティック初の黒人選手としてプレーしていた。
一つ言えるのは、「アスレティックの選手はバスクの土壌で育っている」ということだろう。その人材を吸い上げることで、トップチームは驚くべき成果を上げている。ラ・リーガ優勝は過去8回、今回決勝に進出した国王杯の優勝回数は過去23回で、バルサに次ぐ。
安っぽいボーダーレスではなく、地域の誇りで戦う。
そこに、アスレティックの誇るべき強さの秘密があるのだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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