記憶は残っていない。だが、大舞台に向かう前の、国内最後のゲームが自身と結び付きが深い場所だったのも、何かの縁。偉大な父がボールを蹴った場所から、世界へのチャレンジをスタートさせる。

　11月10日に開幕するU-17ワールドカップに挑む若き日本代表が、10月30日と31日に千葉県内で活動し、本大会前最後となる国内合宿を打ち上げた。

　今回、トレーニングが行なわれた姉崎サッカー場は、2000年から2008年までジェフユナイテッド千葉が練習場として利用していた施設。現在はホームスタジアムであるフクダ電子アリーナのそばにあるユナイテッドパークで活動しているが、当時の拠点は市原市の姉崎。イビチャ・オシム監督のもとで、ナビスコカップ（現ルヴァンカップ）を05年シーズンから２連覇するなど、クラブの歴史を語るうえで欠かせない特別な場所だ。

　現在もチームカラーの黄色と赤のモニュメントが残っている場所に、U-17代表が集結したなかで、この姉崎サッカー場に縁のある選手がひとりいた。広島ユースに籍を置く中島洋太朗だ。

　来季から正式にトップチームの一員になる中島の実父は、広島などで活躍した中島浩司氏。現役引退まで広島で活躍した名バイプレーヤーであり、03年から08年までは千葉でプレー。当時はまだ市原市を本拠地にしていた時代で、この姉崎サッカー場で汗を流していた。

　父が仙台から市原に移籍した03年は生まれておらず、広島に活躍の場を移した09年でもまだ３歳。そのため、当時の記憶はない。しかし、今回の活動に参加する前に「父さんが練習していた場所だよ」と浩司氏から伝えられ、そこで認識をしたという。

「楽しんでこい、頑張ってこいよ」。何か特別な言葉をかけられたわけではないが、世界に打って出る前に父が慣れ親しんだ場所でプレーできたのは、自身の気持ちをより一層引き締める出来事になった。

　活動最終日の31日に、U-17代表は関東大学選抜と40分×４本のトレーニングマッチを実施。合計スコア３－８で敗れたものの、中島は３本目と４本目に出場して存在感を示した。
【PHOTO】日本代表の歴代ユニホームを厳選写真で振り返り！（1992-2023）

　いずれも父と同じボランチで出場。年上の相手にフィジカル面で競り負けるシーンもあったが、「アイデアの部分でよくアドバイスをもらっていた」という攻撃面でセンスを発揮した。

　ふわりと浮かせた技ありのパスで好機に絡む場面もあり、父の面影を感じさせるプレーでチームの攻撃を後方から支えた。

　11月１日には、W杯開催国インドネシアのバリへ向かう。

「グループリーグで対戦するチームはどこも本当に良いところばかり。本当に楽しみという気持ちが今は強い。持っているものを全部出し切って、戦いたいと思う」

　父から教わったスタイルは、どこに行っても変わらない。２種登録されている広島では父と同じ35番を背負う男は、日の丸を背負う誇りとともに、父から受け継いだ想いを持って世界の舞台に挑む。

　広島のチームメイトからもエールをもらい、幼い頃から可愛がってもらった野津田岳人からも激励を受けたプレーメーカーは、自身の価値を証明すべく戦うつもりだ。

取材・文●松尾祐希（フリーライター）

■U-17ワールドカップ　日本のグループステージ対戦スケジュール
第１節　11月11日　vs.ポーランド（18時キックオフ）
第２節　11月14日　vs.アルゼンチン（21時キックオフ）
第３節　11月17日　vs.セネガル（18時キックオフ）
※日時はいずれも日本時間。

【PHOTO】日本代表を応援する麗しき「美女サポーター」たちを一挙紹介！

【U-17代表 最新序列】FWは特性が異なる５人で構成。中盤より後ろはポリバレントな能力を持つ選手で算段

「16強で日本にリベンジできる」U-17W杯で韓国が雪辱に燃える！ アジア杯決勝では完敗「再び、対戦することになれば...」