【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の五十「育成型という嘘」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年12月24日

育成型のチームは、優秀な逸材を生むことに真意がある。

FCバルセロナは年間20億円を育成資金に投じるが、成功するかどうかはケースバイケース。育成には、とてつもない時間とコストがかかる。(C)Getty Images

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「育成型のチームへ!」
 
 クラブ首脳陣がそう唱えた時の響きはいかにも美しく、勇ましい。Jリーグでも、いくつかその例は見られる。
 
 しかしながら、そのスローガンは多分に不透明さを含んでいる。
 
 育成型を自称するチームが、高額年俸のベテラン選手を放出もしくは解雇し、若く安い選手を買い漁っている場合、言葉の嘘を糾弾するべきだろう。育成型のチームとは、若返りを試みるクラブを指すのではない。育成組織、すなわちJrユースやユース組織に投資し、優秀な逸材を生むことに真意がある。
 
「若い選手主体のチーム」と「若い選手を育てるチーム」では、言葉の雰囲気は似ていても、まるきり様相が異なるのだ。
 
 育成には、とてつもない時間とコストがかかる。
 
 かの有名なFCバルセロナは、育成資金として年間20億円を投じている。リオネル・メッシのような人材を輩出することもあるが、無名のまま消えていくケースも少なくない。クラブは、そのリスクを背負っている。バスク人純血主義を掲げるアスレティック・ビルバオに至っては、チーム予算の6分の1以上に当たる1000万ユーロ(約14億円)を育成に投資。地域の提携チーム数は100件以上に及び、スカウトなども含めると巨額の支出となる。
 
 育成を重んじるクラブは、高潔な精神でそのフィロソフィーに挑んでいる。
 
「育成型のチーム」
 
 それは若手主体のチームでは決してないことを重ねて言う。美辞麗句で、意味を混同させるなど卑怯極まりない。その報いと言うべきだろうか、ベテランを軽んじた若返りをしただけのクラブは、そのほとんどが大きく迷走する道を辿る。トップチームは、若手だけでは決して機能しない。才能のある若手の潜在能力を啓発し、触媒となるのは、経験を重ねたベテラン選手だからである。
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