【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のバルサを振り返る Vol.17~2007-08シーズン ~

カテゴリ:メガクラブ

サッカーダイジェストWeb編集部

2015年12月11日

カンテラ出身者たちが華々しく活躍するも……2年連続の無冠。

まだあどけなさの残るボージャン(右)とドス・サントス(左)。このような少年たちが、いきなり大舞台でベテラン顔負けのプレーをやってのける。宝石を次々に生み出すバルサのカンテラが、改めて脚光を浴びた時期でもあった。 (C) Getty Images

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スペインサッカーやバルサのスタイルに慣れてきた終盤戦で、ようやく本来の力を見せ始めたアンリ。翌シーズンに向けて希望は感じさせた。 (C) Getty Images

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 他チームが羨む豊富な戦力を有し、ポテンシャルでも一番といわれながら、無冠に終わった前シーズンのバルサ。選手のモチベーション低下と内部分裂の表面化など、大きな問題を抱えることとなってしまった。
 
 巻き返しを期する2007-08シーズン、チームの立て直しだけでなく、選手間に競争意識を芽生えさせる意味もあってか、バルサは積極的に戦力補強を敢行。守備の強化を図るためにガブリエル・ミリート、エリック・アビダルを、中盤にはトゥーレ・ヤヤを迎え入れた。
 
 そしてティエリ・アンリ。プレミアリーグで4度も得点王に輝いた世界屈指の点取り屋であるこのフランス代表FWの到来で、人々はロナウジーニョ、サミュエル・エトー、リオネル・メッシとの共演に胸を躍らせた。
 
 しかし期待の「ファンタスティック4」は、開幕前の親善試合でエトーが負傷したことにより早くも頓挫。また、アンリは長く慣れ親しんだイングランド・サッカーとの違いに素早く順応することができず、また左サイドという慣れない持ち場でのプレーも彼の感覚を狂わせた。
 
 一方、前シーズンにエトーから生活態度について批判を受けたロナウジーニョは、さらに夜遊びが激しくなり、遅刻や仮病というプロとして(いや社会人として)あるまじき行為を繰り返して周囲からの信頼を失いつつあった。
 
 唯一、期待通りだったのはメッシ。前シーズンにクラシコでハットトリックを達成したり、国王杯準決勝のヘタフェ戦で母国の英雄ディエゴ・マラドーナを彷彿とさせる5人抜き長距離ドリブルゴールを決めたりと、神童ぶりを存分に発揮した彼は、このシーズンではさらに多くの貴重なゴールを生み出した。
 
 そして、さらなる“宝石”の出現に、人々は驚かされた。17歳のボージャン・クルキッチだ。トップチームに昇格したばかりの超新星は、8節ビジャレアル戦でメッシの持っていた最年少得点記録を更新し、デビューイヤーで10ゴールを記録したのである。
 
 メッシの後継者といわれるジオバニ・ドス・サントスもデビューを果たし、さっそく3ゴールを挙げるなど、カンテラ出身者の活躍が目立ったシーズン。アンドレス・イニエスタは、アンリが椎間板ヘルニアで欠場した際には前線の左サイドに就いて十分な仕事を果たすなど、不可欠な存在として地位を確立した。
 
 このように若き生え抜き選手たちからは未来への希望が感じられたものの、やはりチームが一枚岩ではなかったバルサの歩みは鈍く、リーガでは9つの敗戦(宿敵レアル・マドリーには2敗)を喫しての3位と、昨シーズンより順位を落としてフィニッシュ。そして他のコンペティションはいずれも準決勝で敗退……2年連続の無冠が決まった、
 
 期待していた主力級選手が負傷欠場を強いられるというアクシデントがあったとはいえ、戦力的には他チームを上回っていただけに、バルサは勝たなければならなかった。今シーズンもまた、彼らは“自滅”した……。
 
 ロナウジーニョだけでなく、エトーやデコもシーズン中に退団を仄めかすような発言でチームに不安を与えるなど、選手は好き勝手に振る舞い、フランク・ライカールト監督は彼らを管理することができなかった。また、チーム状況に関係なく4-3-3システムにこだわり続けたことも、彼の指揮官としての限界を周囲に感じさせた。
 
 長く続くと思われた黄金時代は遠い過去の話となり、メディアやバルセロニスタの厳しい視線を浴びながら、ライカールトはバルサを去って行った。そして彼とともに栄光に浴した多くの選手が、同じ道を歩むことになったのである。
 
 一時代の終焉を迎え、一からの出直しを余儀なくされたバルサ。この先にどのような未来が待っているのか、この時点では誰も予想できなかったことだろう。

監督:フランク・ライカールト(オランダ)
その他の主なプレーヤー:GK ピント、DF マルケス、テュラム、シルビーニョ、オレゲール、MF デコ、エジミウソン、FW ボージャン、ドス・サントス、グジョンセン、ロナウジーニョ、エスケーロ、ペドロ

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苦悩する姿が頻繁に見られたバルサでの最終シーズン。強いチームを作り上げることはできたライカールト監督だが、我の強い選手たちをコントロールしながらトップに立ち続ける術は持ち合わせていなかったということだろうか。 (C) Getty Images

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◎2007-08シーズン成績
リーガ:3位(19勝10分け9敗・76得点43失点)
国王杯:準決勝敗退(対バレンシア)
チャンピオンズ・リーグ:準決勝敗退(対マンチェスター・ユナイテッド)
 
チーム内得点ランキング(リーガ):エトー(16点)、アンリ(12点)、メッシ(10点)、ボージャン(10点)、ロナウジーニョ(8点)、シャビ(7点)、ドス・サントス(3点)、イニエスタ(3点)、グジョンセン(2点)、マルケス(2点)、デコ(1点)、トゥーレ・ヤヤ(1点)、G・ミリート(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN

DF アビダル(←リヨン)
DF G・ミリート(←サラゴサ)
MF トゥーレ・ヤヤ(←モナコ)
FW アンリ(←アーセナル)
FW ボージャン(←ユースから昇格)
FW ドス・サントス(←ユースから昇格)

GK ピント(←セルタ)
FW ペドロ(←ユースから昇格)
◇OUT

DF ファン・ブロンクホルスト(→フェイエノールト)
DF ベレッチ(→チェルシー)
MF モッタ(→アトレティコ・マドリー)
FW サビオラ(→レアル・マドリー)
FW ジュリ(→ローマ)
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