【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のバルサを振り返る Vol.16~2006-07シーズン ~

カテゴリ:メガクラブ

サッカーダイジェストWeb編集部

2015年12月10日

怪我、監督&同僚批判……自滅して無冠に終わった最強軍団。

ユニホームにはバルサのエンブレム以外はなしという長き伝統が幕を閉じ、このシーズンから「ユニセフ」の文字が掲出されることに。ジョアン・ラポルタ会長によるバルサのイメージアップとブランド化が本格的にスタートした。 (C) Getty Images

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前シーズンの総得失点数(79・32)と比べると、得点は1減り、失点は1増えただけだったが、試合運びの拙さは顕著だった。国王杯準決勝のヘタフェ戦では、第1戦を5-2でモノにしながら、第2戦で0-4の大敗……昨シーズンまでならあり得ない負け方だった。写真はリーガ7節のクラシコ。 (C) Getty Images

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 リーガ連覇と欧州制覇を果たしたバルサ。その強さは新たなシーズンを迎えるにあたっても何ら変わりなく、開幕前の親善試合ではバイエルンなどの強豪チームをも一蹴してみせた。
 
 リーガ、チャンピオンズ・リーグともに優勝候補筆頭に挙げられたバルサは、もちろん選手補強にも余念がなかった。
 
“天敵”チェルシーから点取り屋のエイドゥル・グジョンセンが、そして八百長事件のペナルティでセリエBに降格したユベントスからCBリリアン・テュラム、そしてこの夏のドイツ・ワールドカップで優勝を果たしたイタリア代表のSBジャンルカ・ザンブロッタが加わった。
 
 ただし、不安がなかったわけではない。優秀なタレント集団だからこそ、多くの選手が母国の代表としてワールドカップに出場しており、疲労の蓄積が懸念されていた。
 
 また、フランク・ライカールト監督のアシスタントだったヘンク・テン・カテがアヤックスの監督に就任したことも、チームの頭脳が流出したということで、バルサにどのような影響を与えるかが注目された。
 
 欧州王者として臨んだUEFAスーパーカップでセビージャに敗れたバルサ。リーガではひとつの引き分けを挟んで開幕5連勝を飾ったものの、7節のクラシコ、チャンピオンズ・リーグ(CL)のグループステージ3節・チェルシー戦を落とすと、危機説も囁かれるようになった。
 
 ハードスケジュールのなか、12月には日本で開催されたクラブ・ワールドカップに出場し、準決勝のクラブ・アメリカ(メキシコ)戦では快勝を収めたものの、決勝戦ではブラジルのインテルナシオナルに1点のリードを守りきられて敗北。心身の疲労を抱えて帰国する羽目となった。
 
 年明けの2月には、交代出場の指示に従わなかったということでライカールト監督がサミュエル・エトーを批判。するとエトーは指揮官に反論、さらに同僚ロナウジーニョに対しても「好き放題やっているヤツにとやかく言われたくない」と“口撃”を浴びせた。
 
 ロナウジーニョが再三にわたってチーム練習を休み、ジムに籠るようになっていたのは事実だが、エトーの発言はチーム内に亀裂を生じさせるだけで、何も好影響を与えることはなかった。
 
 この頃はリオネル・メッシも、前シーズンのCL決勝で試合に出られなかった不満から表彰式に顔を出さなかったり、ドイツ・ワールドカップでは自分の出番がないと分かった途端に試合に対して無関心な態度を取ったとして、識者から厳しい意見が寄せられるなど、選手の姿勢、バルサ首脳陣の管理体制にスポットライトがしばしば当てられた。
 
 問題を起こしたエトーはこのシーズン、怪我でわずか18試合の出場。リオネル・メッシも26試合出場に止まったことは、ライカールト監督にとって大きな誤算だった。ハビエル・サビオラが奮闘したものの、出場すれば高い得点率を誇ったこの2人の穴を完全に埋めることは難しかった。
 
 ギクシャクしたチームのなかで、アンドレス・イニエスタが複数のポジションを高いレベルでこなして存在感を示すなど、将来に向けての収穫はあったが、最強といわれたチームはこのシーズン、よもやの無冠に終わった。
 
 普通にやれば勝てるはずだったが、一部の選手が自惚れ、エゴを剥き出した結果、バルサは自滅への道を歩み、最後に失望と屈辱を味わうことに……。選手の自主性を重んじるライカールト監督の限界も、同時に垣間見えるシーズンとなった。

監督:フランク・ライカールト(オランダ)
その他の主なプレーヤー:GK ジョルケラ、DF テュラム、オレゲール、シルビーニョ、ベレッチ、MF エジミウソン、モッタ、FW ジュリ、グジョンセン、サビオラ、エスケーロ

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ロナウジーニョの古巣グレミオの最大のライバルであるインテルナシオナルに敗れ、世界一を逃したクラブ・ワールドカップ。ここで勝利していれば、その後の流れも変わったかもしれない。 (C) SOCCER DIGEST

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◎2006-07シーズン成績
リーガ:2位(22勝10分け6敗・78得点33失点)
国王杯:準決勝敗退(対ヘタフェ)
チャンピオンズ・リーグ:ラウンド16敗退(対リバプール)
クラブ・ワールドカップ:決勝戦敗退(対インテルナシオナル)
 
チーム内得点ランキング(リーガ):ロナウジーニョ(21点)、メッシ(14点)、エトー(11点)、イニエスタ(6点)、サビオラ(5点)、グジョンセン(5点)、ジュリ(3点)、シャビ(3点)、ザンブロッタ(3点)、エスケーロ(1点)、デコ(1点)、プジョール(1点)、マルケス(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN

DF テュラム(←ユベントス)
DF ザンブロッタ(←ユベントス)
FW グジョンセン(←チェルシー)
FW サビオラ(←セビージャ)
◇OUT

MF ガブリ(→アヤックス)
MF ファン・ボンメル(→バイエルン)
FW ラーション(→ヘルシンボリ)
FW M・ロペス(→マジョルカ)
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