［U-20アジア杯］日本２－１中国／３月３日／JARスタジアム

　チームを窮地から救ったのは、FC東京育ちのストライカーだ。

　一言で言えば、“これぞアジアの戦い”だった。３月３日に行なわれたU-20アジアカップのグループステージ第１節。中国と対戦した日本だが、キックオフ直後から思うように足が動かない。初戦特有の緊張から本来のプレーを見せられず、カウンターから相手に押し込まれるシーンが目立った。そして、開始６分。相手に左CKを与えると、CB田中隼人のオウンゴールで先制点を献上してしまう。

　リードを奪った中国はブロックを敷き、最終ラインの４人と中盤の５人が自陣の深い位置に下がって守りを固めてきた。早々の失点でゲームプランの修正を余儀なくされた日本は、ボールを回しながら突破口を探していく。

　だが、中央にスペースがなく、サイドからのクロスを主体に攻撃を展開。中央で競り勝てず、決定的な場面は数えるほど。ゴールの匂いを感じさせたのは、前半アディショナルタイムに田中のアーリークロスにFW坂本一彩が頭で合わせたシーンぐらいだった。

　後半に入ると、日本は持ち直す。ハーフタイム後に右サイドハーフのMF甲田英將に代わって、投入されたMF永長鷹虎が小気味良いタッチで仕掛けて流れを作る。
 

　そして、試合の分水嶺となったのが、FW熊田直紀の投入だ。56分にMF佐野航大とともにピッチに送り出されると、ゴール前で存在感を示す。「ファーサイドの選手が結構ボールウォッチャーになっていた。そう感じていたし、（監督からの）指示もあった」と佐野が振り返る。熊田に課せられたタスクはクロスに合わせてゴールを奪うこと。

　冨樫剛一監督からも投入直前に「熊田に求めるのはゴール」という言葉を掛けられており、与えられた役割は実に分かりやすいモノだった。

　そうした期待を背負ってグラウンドに入ると、185センチほどある相手のCBコンビに対しても怯まずに空中戦を挑んだ。そして、投入されて10分後の66分。左サイドで佐野が粘ると、左足でクロスを入れる。このボールに熊田が反応。高い打点のヘッドで屈強な相手CBに競り勝ち、ネットを揺らした。

　この日の熊田は同点弾だけでは終わらない。70分にも大仕事をやってのける。左サイドで佐野がボールを持つと、右足でアーリークロスを入れる。インスイングで入ってきたボールに熊田はバイシクル気味に合わせるが、上手くミートできず倒れ込む。だが、即座に起き上がってマイボールにすると、キックフェイントで敵を外して冷静に右足でシュートを流し込んだ。
【動画】高い打点のヘッドと確実な右足ショット。“切り札” 熊田直紀が圧巻の２ゴール！