英国人記者が見た「バスク・ダービー」。その特殊性とスペインのサッカー文化について

カテゴリ:ワールド

スティーブ・マッケンジー

2015年10月13日

キックオフの45分前になっても観客はほとんど入らない!?

記者が現地で撮った一枚。ホームのソシエダとアウェーのビルバオのサポーターが笑顔で仲良く収まっているのは「バスク・ダービー」ならではだろう。

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サン・セバスティアンは高級避暑地として有名な風光明媚な地方都市。美しい砂浜と美味しい魚介を堪能できる。

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 ロンドン生まれ、ロンドン育ちの私が先日、なんの因果か幸運にもレアル・ソシエダが本拠地を置くサン・セバスティアンでアスレティック・ビルバオとの「バスク・ダービー」を取材する機会に恵まれた。今回は私が感じた、バスクやスペインの“特殊性”、サッカー文化について書きたいと思う。
 
 いわゆるダービーマッチは、地域特性などの様々な歴史的背景から“ライバル”として対決するものが大半だが、バスク・ダービーは少々勝手が異なる。両クラブとも伝統的に地元出身選手を重用するなど類似した見解や価値観を持っていて、友好的なダービーとして知られている。彼らの最も強固なつながりは、バスクは自治州であり、スペイン国家に対してはあまり好意を抱いていないという点だ。
 
 スタジアム周辺では、両クラブのサポーターが一緒に飲んでいたり、観戦している姿が見受けられる。イングランドでは、リバプール市に本拠地を置くリバプールとエバートンの「マージーサイド・ダービー」も両サポーターの隔離が行なわれない数少ないダービーだが、ここまでの光景が見られることはない。一般的に“ダービー感”を演出するのは、大量に駆け付けたアウェーチームのサポーターでもあるのだから。
 
 私にとって珍しかったのは、会場となったアノエタが、陸上トラックが併設されたスタジアムだったということ。欧州主要リーグでは非常にレアなケースで、スタンドとピッチの距離が遠いため、サポーターの声援や熱気も通常より伝わりにくく、「冷めた」雰囲気が生じてしまうのはもったいない気がした。
 
 キックオフ45分前、スタジアムにはほとんど人がおらず、私は思わず試合開催日を間違えてしまったのかと思った。でも、キックオフが近づき、いよいよ試合が始まるとスタジアムはあっという間に一杯になり、一気にヒートアップ。これはスペインならではのサッカー文化なのだろう。
 
 イングランドとの違いで言えば、トイレ設備にも彼らの文化を感じた。男性、女性どちらも使えるように、ユニセックス仕様になっているのだ。スペイン人がイングランドのスタジアムに来たら、場所や混雑を含めてトイレが最も気掛かりなシチュエーションのひとつになるのではなかろうか。
 
 ほかにも、イングランドでは試合後に大半のバーやレストランは閉まっていて、サポーターは真っ直ぐ家に帰るのに対し、スペインではお店が開いているのも斬新だった。
 
 今季はリーガの下位に沈んでいるソシエダとビルバオだが、試合は両者死闘を繰り広げ、0-0のスコアレスドローに終わった。ビルバオは今季開幕前のスペイン・スーパーカップでバルセロナに2戦合計5-1で勝利しているだけに、彼らがなぜ今の位置にいるのか不思議だった。
 
 サン・セバスティアンは、世界中から美味しい物を求めて人が集まる「美食世界一の街」として知られ、絵画のような景色、素晴らしいビーチもある。そして、もちろんフットボールも! ぜひ皆さんにも一度は訪れることをお勧めしたい。
 
 では、また次回のコラムでお会いしましょう。

文:スティーブ・マッケンジー 

スティーブ・マッケンジー (STEVE MACKENZIE)
profile/1968年6月7日にロンドンに生まれる。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝に輝く。

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