「私のサッカーの解釈ではDFには悲観的、楽観的の2タイプがいる。ナチョは後者に属する。90分、91分、92分間プレーしても集中力を維持できる。すべてのディフェンダーが同じことがきるわけではない」
レアル・マドリーのカルロ・アンチェロッティ監督は記者会見で、自軍のCB、ナチョについて質問されると、こう持論を展開した。これをピッチの他のゾーンに置き換えると、タケ・クボ(久保建英)は「楽観的なメディアプンタ(トップ下)」と定義できるだろう。強豪が相手でも、対峙するDFが巨漢でも、プレーするスタジアムがどこでも関係ない。
望んでいるのは、1本でも多くのパスが自分のところに来ること。後はただひたすら自由詩のようにピッチで躍動する。ソシエダのファンの間ではマドリーから加入する選手に懐疑的な視線が向けられる傾向があり、タケもそうだった。
しかし開幕以来の活躍がそうした見方を変え、根強く残っていた疑念も木曜日のマンチェスター・ユナイテッド戦を経て永遠に払拭された。舞台のオールド・トラフォードがまたそのパフォーマンスに箔をつける。栄光を手にする選手は、伝説の英雄としてクラブ史に名を刻む世界サッカーの聖地のひとつだ。
「パーソナリティと勇気。我々自身に忠実になることだ」。試合前日にイマノル・アルグアシル監督はこう抱負を語ったが、その指揮官の要望を誰よりも体現したのがタケだった。
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「根強いタケへの疑念は永遠に払拭された」久保建英のマンU戦をどう見た? ソシエダ番記者の“リアル評”。「観客から不当な非難を浴びても躊躇なく…」【現地発】
カテゴリ:海外日本人
2022年09月11日
指揮官の要望を誰よりも体現したのがタケだった
前半は果敢にドリブルを仕掛けても、チャンスに繋がることは少なく、ボールロストも頻発した。しかしそれでもトライし続けるのがタケの持ち味だ。そしてその積極性が後半、ヴィクトル・リンデロフとのマッチアップを制する原動力になった。私がタケを「楽観的なメディアプンタ」と定義する所以でもある。
アルグアシル監督は、タケに盲目的な信頼を寄せていることを改めて示した。同時にアトレティコ戦で大事を取って休ませた(後半途中から出場)のは、この大一番に向けて攻撃の切り札の1人として位置付け、万全の状態で臨ませるためだったことが明らかになった。
そして注目は起用ポジションだ。タケはウマル・サディクと2トップを形成。その代役を務めると見られていたダビド・シルバはその後方のロンボの頂点でプレーした。多くのメディアの予想が外れる格好となったが、指揮官はタケとシルバの才能を融合させたほうが得策と考えたに違いない。実際、レフティ同士がパスを交換すると、常に何かが起きそうな予感が漂った。これをサッカーではマヒア(魔法)と呼ぶ。