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【W杯を手繰り寄せた男たち|大久保嘉人編】「自分を呼ばざるを得ない状況」を作り出して、ブラジル行きを叶える

カテゴリ:日本代表

元川悦子

2022年08月17日

ゴール量産で一躍注目の熟練FW

大久保嘉人(おおくぼ・よしと)/1982年6月9日生まれ。C大阪、マジョルカ、神戸、ヴォルフスブルク、川崎、FC東京、磐田、東京Vで活躍した元ストライカー。川崎時代に13年から3年連続J1得点王に輝く。21年に古巣C大阪で20年間のプロキャリアに終止符。J1通算477試合に出場し、191得点は歴代最多。J2通算48試合・18得点、日本代表通算60試合・6得点。

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 4年に一度の祭典、ワールドカップ。この大舞台に立つことを約束された者などいない。メンバー入りを巡る熾烈な争いで、本大会が近づくにつれて序列を覆したケースもある。日本が参戦した過去6大会で、W杯を手繰り寄せた男たちの知られざるストーリー。今回は、目に見える結果を出し続け、FWとしての存在価値を示し、父との約束を守った大久保嘉人に話を訊いた。

――◆――◆――

 カタール・ワールドカップ(W杯)が刻一刻と近づいているが、史上初のベスト8を狙う日本にとっての最大の課題と言えるのが「誰が点を取るか」だろう。

 最終予選のスコアラーを見ると、右ウイングの伊東純也(スタッド・ランス)が4点、FWの大黒柱・大迫勇也(神戸)と左サイドの切り札・三笘薫(ブライトン)が2点、10番の南野拓実(モナコ)、キャプテンの吉田麻也(シャルケ)、若きダイナモ・田中碧(デュッセルドルフ)が1点ずつとなっている。

 つまり、日本の場合は2列目が得点することがほとんどで、最前線でゴールを奪えているのは大迫1人ということになる。その大迫も今季は怪我を繰り返し、フル稼働できていない。
 
 8月6日のC大阪戦で約1か月ぶりのリーグ戦先発出場を果たし、復調をアピールしたものの、まだ先々が安泰というわけではない。「1トップ問題」は依然として不透明と言わざるを得ないのだ。

 2014年ブラジルW杯の日本も似たような状況に直面していた。2010年南アフリカW杯の後、日本代表の指揮を執ったアルベルト・ザッケローニ監督は当初、前田遼一や李忠成(新潟シンガポール)、ハーフナー・マイク(FCボンボネーラ)を起用。2013年東アジアカップ以降は柿谷曜一朗(名古屋)と大迫の両若手を抜擢した。柿谷は2013年J1で21点、大迫も19点をマークし、勢いに乗っていたのは確かだった。

 だが、2014年になると柿谷はスランプに。1860ミュンヘンに赴いた大迫は悪くない出来だったが、未知数の存在だった。2列目に本田圭佑、岡崎慎司、香川真司(シント=トロイデン)らタレントを擁していたザック監督にしてみれば、「確実に点を取ってくれるFWがいればチームは完成形に近づく」という思いは強かったに違いない。

「日本の穴」とも言えるポジションに凄まじい勢いで滑り込もうとしたのが、ゴールを量産していたベテランの大久保嘉人である。
 
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