苦しくも充実していた竹内彬のプロ16年間。そしてスパイクを脱いでも、なお意気軒昂に

カテゴリ:Jリーグ

今井雄一朗

2021年12月22日

開幕戦のスタメンに抜擢され、同点弾をアシスト

名古屋でのプロ3年目に定位置を確保。一本のクロスとそこに込めた闘志で道を切り拓いた。(C)SOCCER DIGEST

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 多くのビッグネームがスパイクを脱いだ2021年、知る人ぞ知る実力者の引退が四国にもあった。名古屋から千葉、再びの名古屋を経て大分、そして讃岐。のべ4クラブ、16年間の現役生活を終えた竹内彬は、しかし息つく間もなく次の人生のスタートを切っている。

 讃岐の強化担当兼地域連携リーダー。現役引退と同時に発表された彼のセカンドキャリアは、苦しくも充実した“ファーストキャリア”あっての自信の決断でもあった。

 2006年、国士舘大から名古屋に加入した武骨なセンターバックは焦っていた。「『プロになるんだ!』という気持ちばかりが強すぎて、それからの準備ができていなかった」。当時の名古屋は柏から玉田圭司を迎え入れ、楢﨑正剛など現役日本代表やそれに準ずる実力派揃い。練習のレベルの高さに触れ、すべての自信を失うことから、竹内のプロサッカー人生は始まったという。

 死に物狂いで臨んだ2年目は相次ぐ負傷者の中で出場機会を伸ばし、迎えた3年目。クラブ史上最高の名将、ストイコビッチ監督就任の中で彼は強運を引き寄せる。

「その年のキャンプは気合いを入れていたんですが、いざ紅白戦が始まると自分の名前はメンバーになくて。でもスタメンの選手がコンディション不良で離脱して、サブ組のサイドバックに指名されたんです。これはやるしかない、と思いましたよね。とにかくガムシャラに、『走る走る走る、闘う闘う闘う』とやりました。そして開幕1週間前の非公開の練習試合、残り10分で出番が来て、一本のクロスを上げたんです。これが評価されたらしく、次の練習ではレギュラー組のビブスを渡されました」

 竹内はそのまま開幕戦のスタメンに抜擢され、不慣れな右サイドバックで躍動。0-1で迎えた後半にヨンセンの同点ゴールをアシストした。クロスは、練習試合で上げた形と同じだったから、何やら運命的でもある。その年、リーグ戦31試合に出場した背番号30は定位置を確保し、本職のセンターバックとしての評価も確立する。
 
 名古屋でのキャリアはその後、2009年ACL準決勝でのレッドカードなど苦い思い出も多かったが、2010年リーグ優勝の瞬間をピッチで味わうなど、歓喜の記憶もまた多い。一本のクロスとそこに込めた闘志をもって道を切り拓いた男の顔には、1年目には考えられなかった自信が満ち溢れるようになった。

 その後、千葉で2012年にJ2リーグ42試合フルタイム出場を達成するなど試合出場経験を重ね、2015年には32歳にして古巣名古屋への帰還を果たす。当初の評価はセンターバックの4番手、5番手だったが、若返りを図ったチームにあってその安定したパフォーマンスは重宝され、西野朗監督、小倉隆史監督、ジュロブスキー監督といずれの指揮官下においても彼はディフェンスラインの軸に据えられた。

 ただ惜しむらくは個人の安定感が成績に反映できなかったことで、竹内は「名古屋の歴史の中であってはならないような出来事。サポーターの皆さんにはいつでも申し訳ない気持ちしかない」と肩を落とす。実力をつけ、結果に責任を負う立場となれたからこそ、この時代を語る時には常に暗い声を出す。
 
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